金銭の返還を求める訴訟
事件の概要
母親が,貸金庫に保管していた現金2700万円を,貸金庫の鍵の管理を任せられていた息子が無断で引き出し,返還しなかったため,息子に対し,返還を求める裁判を起こした事案。
母親から依頼を受けて,当事務所が不法行為に基づく損害賠償請求の訴えを起こしました。
息子は,2700万円を引き出したことは認めたものの,引き出しに気付いた後も,母親が暫くの間,返還を求めてこなかったことなどを挙げて,贈与を受けたものであると反論してきました。
結果
勝訴判決
判決理由
裁判所は,『原告(母親)は,被告(息子)に対し,本件貸金庫の開閉の代理人とし ての立場を与え,その鍵を渡しており,客観的には,被告は,本件貸金庫の現金を自由に出し入れできる状況にあったといえ,被告がこれを自宅の金庫に持ち 帰ったとしても,原告にとっては それほど状況の変化があったとはいえない・・そうすると,例えば,全くの他人が自己の大金を奪ったような事案と比べて, 原告の意思に反しているという程度が小さいということができる。したがって,原告が被告に2700万円を贈与したものではなく自分のものであると認識して いたとしても,原告が被告に直ちに返還を求めず,被告と会うなどしていたとしても,不自然不合理であるということはできない。・・2700万円という高額 な金銭のやりとりについては,これを裏付ける客観的な書面等が存在したり,贈与税の申告をするなどの当事者の対応が見られるのが通常と思われるのに,その ようなものが存在しないのであるから,2700万円の贈与はにわかに推認し難い。』と認定し,2700万円の支払を認める判決を得ることが出来ました。