【相続】財産管理型寄与分について弁護士が解説します【Q&A付】

目次

財産管理型寄与分とは?

被相続人の財産管理をすることによって相続財産の維持に寄与した場合です。
例えば,被相続人所有の賃貸アパートを管理することによって管理費用の支出を免れた場合,被相続人所有の土地の売却にあたり,土地上の家屋の借家人との立退交渉,家屋の取壊し及び滅失登記手続き,同土地の売買契約の締結等に努力したことにより,土地の売却価格を増加させた場合です。

寄与分についてはこちらの記事で解説しています。

財産管理型寄与分が認められる要件

財産管理型寄与分が認められるには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

①被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与があったこと

管理会社に委託することなく,賃貸アパートにつき補修,掃除,滞納督促,入退去時の立会い,隣家とのトラブル処理の業務を行っていた場合などに特別の寄与があったと認められます。そこで,単に,庭先に生える雑草を季節ごとに刈り取っていたに過ぎない場合や,管理会社が賃貸アパートの管理している状況で,相続人が不動産の清掃や手入れなどしていたとしても,特別の寄与があったとは認められません。

②無償又はそれに近い状態で財産管理を行っていたこと

相続人が,被相続人の建物の管理を行う一方,建物に無償で居住しているなどという場合には,相当の対価を受け取っていると考えられるため,寄与分が否定もしくは少額になる可能性もあります。

③ 継続的に財産管理を行っていること

2,3か月間だけ貸アパートの管理を行ったという程度では寄与分は認められません。

④寄与行為の結果として被相続人の財産を維持又は増加させていること

財産管理型寄与分の計算方法

寄与相続人が財産管理を自ら行っていた場合,第三者に委託した際の報酬額を基準としますが,それは専門家に依頼した場合の料金であるため,裁量割合を乗じて,一定程度減額されることがあります。

財産管理型寄与分を求める計算式
相当と認められる財産管理費用×裁量割合

相当と認められる財産管理費用について

第三者に委託した際の報酬額ですが,賃貸不動産の管理全般については,不動産管理会社の請負料金(基本料として賃料の5~10%程度が一般的であり,それに実際に要した修理費等が加算されます)を参考にします。

一方,身内が第三者に委託して被相続人の財産管理を行う場合もありますが,このような場合には,実際の支出額が基準になるものと考えられます。

財産管理型寄与分に関するQ&A

相続人自身が財産管理行為を行うのではなく,第三者に財産管理を委託し,その費用を相続人が負担した場合,財産管理型寄与分は請求出来ますか?

被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度の経済的負担について除外した残りの部分について,財産管理型寄与分を請求出来るとされています。

被相続人が不動産に関する訴訟の第1審で敗訴した場合に,相続人の一人が,控訴審において証拠の収集に奔走し逆転勝訴判決を得た場合,財産管理型寄与分は請求出来ますか?

認められる場合があります。以下のような裁判例があります。

「被相続人が遺産不動産に係る訴訟の第一審に敗訴した後,・・証拠の収集に奔走し,遂に控訴審において逆転勝訴の結果を得ることに顕著な貢献があったことが認められ,今日の遺産の存在についてその功績を無視することはできないから,同人の右行為は,訴訟代理人である弁護士の指導があったであろうことを考慮しても,なお親族としての扶助義務の範囲を超え,かつ単なる精神的寄与以上のものであって,遺産の維持につき特別の寄与があったというべきである。
そして,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額,上記特別受益その他一切の事情を考慮すると,同人の寄与分を遺産の1割と認めるのが相当である」

大阪家庭裁判所平成6年11月2日審判
相続人が被相続人の株式や投資信託による資金運用をした結果,そのまま被相続人の遺産を維持した場合と比較して,資産が5000万円増加した場合,財産管理型寄与分を請求出来ますか?

出来ません。
資産の運用は,利益が出る反面,損失も生じるもので,偶然に上昇したことを捉えて寄与分とみるべきではないと考えられているからです。これについては,以下のような判例があります。

「株式,投資信託による資産運用には利益の可能性とともに,常に損失のリスクを伴う。しかるに,一部の相続人が被相続人の資産を運用した場合,その損失によるリスクは負担せずに,たまたま利益の生じた場合には寄与と主張することは,いわば自己に都合の良い面だけをつまみ食い的に主張するものであり,そのような利益に寄与分を認めることが相続人間の衡平に資するとは,一般的にはいいがたい。・・・株価が上昇した時点で売却したことで,大幅な利益を生じている。しかしながら,株価の上昇自体は偶然であり,単にその時期を捉えて保有株式を売却した行為のみで,特別の寄与を評価するには値せず,この点においても,申立人〇〇の資産用に寄与分は認められない」

平成19年2月26日大阪家庭裁判所審判

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