【労働問題】不当解雇として高額な慰謝料を請求された事例
ご相談まで
登場人物
法人X・・・従業員AとBの勤務先であり当事務所の依頼者
従業員A・・・本件相手方
従業員B・・・従業員Aからパワハラを受けたと法人Xに通告
経緯
法人Xの従業員であるBは,同フロアに勤務しているAから「笑い声が耳障りだ」と言われ,その発言に傷つき抑うつ状態となり出勤が出来なくなりました。
事態を知ったBの夫は弁護士をつけて,Xに対し内容証明郵便を送付しました。
その内容は「AとBが職場内で顔を合わせないような対策を講じて欲しい」というものでした。
Xとしては勤務場所の変更は困難であると判断し,Aには退職してもらうよう話をしました。
Aは社長らと面談し,解雇を受け入れることを承諾。
その退職の際Aは,有給残り日数分の給与および慰労金(就業規則には記載されていない退職金)という名目で金銭を受領していました。
しかしAとしては,以前よりBの笑い声が気に触っており,不眠症状が出る等ノイローゼ気味になっていました。『Bにも問題があるはずなのに,自分だけが悪者にされ解雇されるのは納得がいかない』と考えるようになりました。
そこでAはXに対し
- 勤務を再開させること
- XからAに対し慰謝料として100万円を支払うこと
- 解雇日以降の給与を支払うこと
を内容証明郵便にて要求しました。
詳細な事実確認等を行わず,Aを解雇したXは内容証明郵便への対応や本件紛争の交渉を弁護士に一任したいと考え,当事務所へ相談されました。
解決までの流れ
当初Aは慰謝料100万円を請求していましたが,さまざまな理由をつけ交渉中にその金額をどんどん引き上げていきました。
どのように説得すればお互い折りがつくかを考えていたところ,Aは解雇後すぐに失業保険を受給していることがわかりました。
そもそも失業保険とは,失業中の生活費を支援するための保険であり,そういったものを受給しているにもかかわらず,解雇後から現在までの給与の支払いを求めるというのは矛盾した行動ではないかと指摘しました。
また,過去の裁判例を探し,失業保険を受給する・退職時に慰労金(退職金)を受け取るという行動は,解雇を受け入れたと見なされるため,解雇無効は認められないということも主張しました。
最終的には,100万円で折り合いをつけることで双方合意に至りました。
本件は相手側が裁判や労働審判への移行を匂わせてきておりましたが,代理人同士の交渉のみで解決することが出来ました。
Aの行動の矛盾点の指摘や,実際の判例を提示しねばり強く交渉を続けた点が功を奏したように思います。