NPO法人の解散・精算手続きにおける紛争を解決した事例
本事件の概要
登場人物
原告:NPO法人(監事)
被告(依頼者):原告法人の代表理事長
概要
NPO法人が監事によって私物化されていたため,多額の使途不明金等が存在していました。それに気付いた理事長が同法人を本来の有るべき姿に戻そうと活動していました。
そのことを察した監事が,社員総会を開催して代表理事を解任し,NPO法人を解散するとともに,自身は清算人に就任し,NPO法人所有の商標を,身が新たに設立した一般社団法人に譲渡する計画を立てていることが分かりました。そのため,理事長は,それを防ぐべく,その商標の持分を依頼者である株式会社に譲渡したところ,清算人となった監事がNPO法人を代表して,依頼者に対し,商標権の移転登録の抹消を求める裁判を起こしてきました。
解決までの流れ
依頼者の側では,理事長を解任した社員総会は,そもそも開催されておらず,議事録は架空のものであること,仮に社員総会が開催されていたとしても,理事長を解任する正当理由がないこと,大多数の社員に対して招集通知が送付されておらず,決議に必要な定足数も満たしていなかったこと等から,社員総会は不存在又は無効であるとして争いました。
また,NPO法では,監事が理事と兼務出来ないのと同様,清算人にも就任出来ないと解釈出来るため,監事であった者が清算人として,NPO法人を代表して訴えを起こすこと自体,不適法として,訴えを却下すべきとの主張も行いました。
裁判では,双方の主張が激しく争われ,尋問手続きが行われる予定で,その準備に向けて,双方陳述書を提出しましたが,その内容を踏まえ,知的財産部の裁判官からの強い勧めで,和解の話し合いが行われることになり,細かい点まで条件をすりあわせ,15回目の裁判期日で,和解が成立し,円満に紛争が解決しました。
弁護士による解決のポイント
NPO法人の解散,清算手続きについては,ほとんど裁判例がなく,知的財産部の裁判官でも判断が難しい事案でした。
そのような中,NPO法人の手続き等に関するありとあらゆる文献を証拠として提出し,裁判官にその手続きの細かい点まで理解してもらったのが功を奏したのだと思います。
弁護士でもNPO法人の裁判に関わることは余りないと思われますので非常に貴重な経験になりました。是非,今後の業務に生かしたいと考えています。