
借用書がなくても大丈夫? 友人や家族に貸したお金が返ってこないときの正しい対処法を弁護士がわかりやすく解説します!

友だちだから大丈夫!と思ってお金を貸したのに,返済の約束を守ってもらえない・・・
このような知人間での金銭トラブルは少なくありません。
さらに,よく知った友だちだからということで借用書を作成せずお金を貸してしまったケースも多く,泣き寝入りをしてしまう方もいます。
しかし,法律上のルールに基づいて貸したお金を取り戻す手段はきちんと用意されています。
本コラムでは,返済を求めるために必要な証拠や法的手続きの流れ・注意点について解説します。
口約束やメールなどの文面での貸し借りでも法的に有効なのか?

「借用書を作っていないけれど、知人にお金を貸したのは確かなのです。返してもらえますよね?」
こういったご相談は多く、実際に口頭やメール・LINEだけで金銭のやり取りをしたケースも珍しくありません。
結論から言えば、借用書がなくてもお金の貸し借りは法律上“契約”として成立します。
日本の民法では、お金の貸し借りは「消費貸借契約」とされ、当事者間の合意があれば書面がなくても契約は有効と認められています。
しかし問題は、本当に貸したのか・返済の約束をしていたのかを証明できるかどうかです。
口約束だけでは、後になって相手が「借りた覚えはない」と言い出すこともあり、法的手続きに進むうえで非常に不利になります。
そこで重要になるのが、LINEのやり取り・メール・振込記録・通話の録音などの“証拠”です。
たとえば、「〇月〇日に10万円貸してくれてありがとう。来月中に返すよ!」というLINEメッセージが残っていれば、それは契約内容を証明する有力な証拠になります。
このように、借用書がなくても証拠が整っていれば、法的に返済を求めることは可能です。
逆に言えば、証拠が不十分な場合は貸した側の主張が認められにくくなってしまいます。
お金を返してもらえない場合、どこまで請求できるのか?

知人にお金を貸したのに返してもらえない場合、法的に請求できるのは貸したお金(元本)だけではありません。
条件によっては利息や遅延損害金、さらには訴訟費用なども請求することができます。
まず、元本については、貸し付けた金額そのものなので当然に返還請求が可能です。
問題は利息や損害金です。
あらかじめ「月1万円の利息をつけて返してもらう」などと約束していた場合は、それを裏付ける証拠(LINEのメッセージやメールなど)があれば、約束した利息分も請求可能です。
一方、利息の取り決めがなかった場合でも、返済期限の翌日から遅延損害金を請求できます。
民法では、個人間の金銭トラブルの場合、年3%の法定利率が適用されます。
ただし、これらを請求するには、いずれも「証拠」が必要です。
とくに利息や返済期日の取り決めは、曖昧なやり取りでは裁判所に認められないこともあるため、文面や日時の明確な記録が重要です。
また、お金の貸し借りには時効(消滅時効)もあります。
通常返済期限から5年が経過すると、債権は時効により消滅する可能性があります。貸してから長期間が経っている場合には、早めに行動することが大切です。
知人へ貸したお金を返済してもらうにはどのような手段がある?

知人に返済を求めても応じてくれない場合、最終的には法的手段を使って請求することになります。ここでは主な3つの方法をご紹介します。
1 話し合いでの解決を試みる
いきなり法的措置に踏み切る前に、冷静に話し合いの場を設けることが大切です。
感情的に責め立てるのではなく、「○月○日に貸した○万円について、いつ返してもらえるか教えてほしい」といった、具体的かつ穏やかな口調でのやりとりを心がけましょう。
このときの会話内容を記録しておく(録音・メモ・LINEでの再確認など)ことも、後の証拠として役立つことがあります。
2 内容証明郵便の送付
話し合いでも解決しない場合は、内容証明郵便を利用して正式な請求を行います。
これは「いつ・誰が・どんな内容を請求したか」を証明できる郵便であり、相手に“本気度”を伝える手段として有効です。
請求内容と返済期限を明記し、「期限までに返済がない場合は法的手段も検討する」と記載することで、相手にプレッシャーを与えることができます。
3 裁判所での法的手続き
内容証明にも応じない場合は、以下のような法的手段に進みます。
- 少額訴訟(60万円以下)
簡易でスピーディに判断が出る手続きです。1日で判決が出ることもあります。 - 通常訴訟
争いが複雑かつ金額が大きい場合の手続きです。証拠の整理や主張のやりとりが必要です。 - 支払督促
申立人の申立てに基づいて裁判所書記官が金銭の支払いを求める制度で、相手方からの異議の申立てがなければ判決と同様の法的効力が生じます。
知人にお金を貸す前のやっておくべきリスク対策

お金の貸し借りは、たとえ相手が親しい知人や家族であっても、トラブルになる可能性がある以上、事前のリスク対策が重要です。
信用していたのに裏切られた・・・と後悔する前に、以下のような準備をしておきましょう。
借用書の作成
基本であり、もっとも効果的な対策が借用書の作成です。
借用書には最低限、以下の内容を明記しましょう。
- 借り主と貸し主の氏名・住所
- 貸した金額
- 返済期限
- 利息の有無
- 支払方法(振込・分割など)
- 契約日と署名押印
特に返済期限の明記は重要です。期限がなければ請求が曖昧になり、裁判でも不利になる可能性があります。
口座に振り込んで貸付ける
現金で渡すと、あとから「もらっただけ」「貸された覚えはない」と言われることがあります。
できる限り銀行振込で貸し付け、その記録を証拠として残すようにしましょう。
振込の名義やメモ欄に「貸付金」などと記載すると、より明確です。
連帯保証人の検討
高額を貸す場合や返済が不安な場合は,連帯保証人をつけてもらうことも一つの手です。
連帯保証人は,本人が支払えないときに代わりに支払う義務を負うため、回収の可能性が高まります。
親しい仲だからこそ書類で残す意識を
「親しい間柄で書面なんて…」とためらう方も多いですが,むしろ親しいからこそ明文化しておくことが双方のためになります。
借りた側も軽い気持ちで済ませず,責任を持って返済する意識が生まれます。

万が一トラブルになったときに備えて、貸す前の準備がその後の対応の明暗を分けます。
弁護士に相談するタイミング





なかなか返済してもらえないけど,いつまで様子見すればいい?
内容証明は自分で送った方がいいの?
こうした悩みを抱えたまま,時間が経過し最終的に回収不能になるケースも少なくありません。
「あれ?おかしいな」と感じた時点で弁護士へ相談することをお勧めします。
相手が返済を先延ばしにする
「今月は厳しいから来月にしてほしい」「返さなきゃいけないのはわかってるけれど,ちょっと待ってて」といった返答が何度も続いている場合,誠実に返す意思がない可能性もあります。
弁護士が介入することで,相手の態度が急変することもよくあります。
相手と連絡が取れなくなった
LINEや電話がブロックされてしまった・返事がまったく来ない,といった状況は深刻です。
この場合,内容証明郵便の送付や裁判手続きの検討が必要になってきます。
自分で対処するのが難しい段階です。
証拠はあるけれど,どのように請求すればよいかわからない
「LINEは残っているけれど、これで証拠になる?」「返済を求める文面はどう書けばいいの?」といった疑問は,早い段階で弁護士に確認することでスムーズに対応できます。
無理に自力で進めてしまうと,あとから不利になることもあるため注意が必要です。
お金のトラブルは精神的なストレスも大きく,放置しても状況は良くなりません。
限界を感じてしまう前に,早めに弁護士に相談しておくことで,最小限の労力で解決できる可能性があります。
弁護士を入れるメリットとしては,直接相手と交渉をしなくてよくなるため債権者側の心理的負担の軽減や
弁護士名を入れた通知を送ると相手に「本気で返済させようとしている・・・」と事の重大さを認識し態度が変わることが挙げられます。
はやめのご相談が,解決への近道です!
お金のトラブルはこじれやすい!はやめに対応しましょう!


知人との金銭トラブルは,互いの信頼関係があるからこそ話題にしづらく,対応を先延ばしにしがちです。
ですが、貸したのに返ってこないという状態を放置すれば,回収できる可能性はどんどん下がってしまいます。
まずは冷静に事実を整理し,証拠を確保しましょう。そして話し合いや内容証明など段階的に対応を進めていくことが大切です。
少しでも不安を感じたら,早めに弁護士へ相談することで,あなたの大切なお金を守るための一歩を踏み出すことができます。