不当な預金の引き出し
事案の概要
兄弟間の相続で,兄弟の一方が被相続人の生前,多額の預金を横領していた事案
不動産賃貸業を営んでいた母親が脳梗塞で倒れ,重度の失語症となったため,相続人Yが母親の預金通帳等全てを預り,保管していたところ,不当に母親の預金が引き出されていることが発覚したため,他方の相続人Xからの依頼を受けて,東京地方裁判所に,Yに対する損害賠償等請求訴訟を起こしたました。
裁判では,Yは,母親の医療費として支出したとか,母親から度々贈与を受けていたなどと主張しておりました。しかし,こちらが,母親の確定申告書や医療費の領収書等によれば,各預金の出金額が,不動産賃貸の収支状況や医療費の額と整合していないこと,主治医の医療記録によれば,母親が贈与の意思表示を出来る状態にあったとは到底言えないことなどを,説得的に主張したところ,Yの反論が苦し紛れになり,裁判の途中で,預金の一部を,現金として自宅に保管していることを認めるに至りました。
さらに,裁判官からも,母親の状態からすれば,贈与があったと認定することは困難との心証が開示され,最終的には,裁判所の和解案(Y→Xに1500万円の支払い)を双方受け入れる形で,和解が成立しました。