著作隣接権
著作隣接権とは、実演家、レコード制作者、放送事業者の3者の権利を総称したものです。
著作物が実際に利用されるためには、著作物を創作する行為だけでなく、伝達する行為が不可欠であるため、伝達行為を行う者も、著作権法上、別途保護されているのです。
実演家
例えば、他人が作詞、作曲をした曲を歌う歌手、オーケストラの演奏における楽器の演奏者、指揮者などが実演家に該当します。
実演家には、主に以下のような権利が認められています。
実演家人格権
氏名表示権
例えば、歌手は、CDジャケットに歌唱している者として氏名・芸名を表示すること又は表示しないことを要求することが出来ます。
同一性保持権
デジタル技術により、容易に実演の改変的利用が可能となっていることから、保護の必要性が高まっております。
例えば俳優の顔の表情・大きさを変えることによりおかしな演技に変えたり、ダンサーを裸にしたり、俳優のセリフを卑猥な言葉に置き換えたり、歌手の声をドナルドダックのような声に変えたりすることは、実演家人格権を侵害します。
放送・有線放送権
自分の知らないところで実演が利用されるのを防止するために、自分の実演の放送、有線放送について許諾する権利を実演家に与えています。
商業用レコードの二次的使用料請求権
放送、有線放送での商業用レコードの使用により、実演家が生実演の機会を失う結果となる事情を考慮して、実演家に補償を与えています。
この二次的使用料請求権は、原則として、個々の実演家が行使するのではなく、日本芸能実演家団体協議会が行使することになっています。
貸与権・貸与報酬請求権
1年間に限り貸与権が認められています。
その期間経過後の49年間は、貸与報酬請求権が認められています。
発売直後の商業用レコードのレンタルは、商業用レコードの販売と競合するため、実演家の許可なくしては行えません。
他方、発売後、一定期間(1年間)を経過すると、販売との競合関係が薄れるため、実演家の許可なくレンタルを行うことが出来ます。ただし、その場合には、実演家に報酬を支払わなくてはならないことになっています(貸与報酬権)。
なお、レンタル業を行う場合には、著作権者(作詞家等)に対する使用料、実演家(歌手)、レコード製作者に対する使用料(報酬)を支払わなくてはなりません。使用料は、原則として、それぞれ、以下の団体が行使することになっています。
- 著作権者に対する使用料・・・JASRAC(日本音楽著作権協会)
- 実演家に対する使用料・・・日本芸能実演家団体協議会
- レコード製作者に対する使用料・・・日本レコード協会
レコード制作者
最新の音響技術を駆使したことで、優れた音質で音楽をレコードに固定したレコード制作者に、著作物の創作に似た準創作性を認め、保護しています。
EMIミュージック・ジャパン、ワーナーミュージック・ジャパンなどが、レコード制作者に該当します。
放送事業者
放送という手段によって、より多くの公衆に著作物を提供する役割を果たしている放送事業者に、著作物の創作に似た準創作性を認めております。
株式会社フジテレビジョン、株式会社TBSなどが、放送事業者に該当します。