
「推し活」と「転売問題」を法律目線で解説!ファンの熱意を利用する違法行為とは

最近では「推し活」という言葉が広まり、多くの人がアイドルやアーティスト、キャラクター等に夢中になり,それらを応援することが流行しています。
しかしその裏で、その熱意を利用し、不当な利益を得ようとする,いわゆる「転売ヤー」の存在が大きな問題となっています。
特に、ライブチケットや限定グッズは販売と同時に買い占められ、高額で転売されることが少なくありません。
このような転売行為はファンの手に正規価格で届くべき商品を奪い、不当な価格で購入を迫る行為として強く非難されています。
では、こうした転売は法律上どのような扱いを受けるのでしょうか?
チケット不正転売禁止法や古物営業法など、転売に関わる法律は複数存在しています。
違法となるケースと合法な範囲を正しく理解しないと、知らないうちに法を犯してしまう可能性もあります。
本記事では、「推し活」と転売の関係を法律の観点から紐解き、ファンが健全に楽しむための注意点を解説します。
“推し活”とは?

“推し活”とは、自分が応援するアイドル、アーティスト、俳優、アニメキャラクター、VTuberなど、いわゆる「推し」を全力で応援する活動のことを指します。
推し活のスタイルは人それぞれですが、主に以下のような具体例があります。
推し活の具体例
- コンサートやイベントへ参加
アイドルやアーティストのコンサート、舞台俳優の公演、アニメの上映会などに足を運び、直接「推し」を応援することです。 - グッズの収集
事務所やアニメ公式運営から販売されるアクリルスタンド、ぬいぐるみ、ポスター、CD、DVDなどのグッズを集めるのも推し活の一環です。
また、ファンの間では「痛バ(痛バッグ)」と呼ばれる、推しのグッズを大量に装飾したバッグを作り、イベントに持参する文化も広まっています。 - 聖地巡礼
推しが出演したドラマや映画のロケ地、アニメの舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」も、推し活の醍醐味といえるでしょう。
例えば、人気アニメの舞台となった町や、アイドルの出身地に行き、推しの足跡をたどることがファンにとって特別な体験になります。 - SNSでの応援活動
XやInstagram、TikTokなどのSNSを活用し、推しの魅力を発信することも推し活の一環です。ファンアートを描いたり、推しの活躍を拡散したりすることで、より多くの人に推しの魅力を伝えることができる。
また,SNS上で同じ“推し”をもつファン同士で交流することも楽しみの1つといえます。
推し活の経済効果
“推し活”は単なる趣味にとどまらず、経済にも大きな影響を与えています。
推しを応援するためにファンが消費する金額は、音楽業界やアニメ業界だけでなく、観光や飲食業にも波及しており、その経済効果は計り知れません。
例えば、ライブやイベントのチケット代に加え、公式グッズの購入、CD・DVDの売上が直接的な収益源となります。
また、推しの誕生日や記念日には、ファンが飲食店等を貸し切ってお祝いする文化もあり,それを行えばカフェや飲食店の売上が伸びます。さらに、アニメやドラマの舞台となった「聖地巡礼」では、観光客が増加し,宿泊施設やグッズ・お土産などの売り上げが伸び,地域経済を活性化させています。
転売とそれに関係する法律

転売とは、商品を購入し、それを第三者に販売する行為を指します。古くから行われてきた商行為の一つですが、近年ではフリマアプリやネットオークションの普及により、個人でも簡単に転売ができるようになりました。
しかし、すべての転売が合法とは限らず、場合によっては違法行為とみなされることがあります。
転売に関する法律はある?
例えば、「チケット不正転売禁止法」により、定価以上でのチケット転売は違法とされています。また、「古物営業法」では、中古品を仕入れて販売する場合、管轄の警察署へ古物商許可を取得する必要があります。
さらに、コロナ禍ではマスクや消毒液等が品薄になった際に,「国民生活安定緊急措置法」でその高額転売を禁止していたこともありました。
一方で、メーカーや販売店が公式に認めた方法での再販や、使用済み商品の販売(リセール)は合法です。
転売を行う際は、法律を理解し、違法行為に当たらないか慎重に判断することが重要です。
チケット不正転売禁止法とは?

ここからは,特に歌手やアイドル,スポーツ観戦が好きな方に関わる法律をご紹介します。
SNSやインターネットの普及により高額不正転売が横行し始め,問題視されておりましたが,その行為を規制する明確な法律はありませんでした。
さらに2020年に東京オリンピックが開催が決定し,チケットの転売を防ぐべく法整備をすべきという議論も出るようになりました。
以上のような経緯があり,2018年12月に「チケット不正転売禁止法(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)」が成立し,2019年6月に施行されました。
この法律は,チケットの適正な流通の確保および転売による価格高騰を防ぎ,ファンが正規価格で購入できるようにすることを目的としています。
そのため,定価以上でチケットを転売したり,転売目的でチケットを購入した場合など違反した場合には罰則として1年以下の懲役または100万円以下の罰金(またはこれらの両方)が科せられるます。
この法律におけるチケットとは「特定興行入場券」のことを指します。
特定興行入場券は以下の要件に当てはまるチケットのことをいいます
- 興行の日時・場所・入場資格者又は座席が指定されたもの
- 入場資格者または購入者の氏名および連絡先を確認する措置が講じられており,その内容がチケットに記載されているもの。
(ex. 本券は購入者の氏名および連絡先を確認した上で販売されたものです。) - 興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明示され,その内容がチケットに記載されているもの。
(ex. 無断有償譲渡禁止。 など)
※電子チケットの場合は,②および③の内容は画像内に記載されています。
チケット不正転売禁止法施行後の摘発事例
事例1
2019年7~10月にかけてプロ野球のチケットをインターネット上で高額転売したとして,警視庁は2019年11月に男性を逮捕した。(チケット不正転売禁止法違反として逮捕されるのは初の事例)
調べによれば男性は転売サイトで,定価3,400円のチケットなど4枚を,合計5万6000円で不正転売した疑いがある。
事例2
2019年6月から9月にかけて,人気アイドルグループのコンサートチケットを転売していた女性が,チケット不正転売禁止法違反で逮捕された。
女性はSNS上でチケットを転売していたほか,自らも身分証を偽造しコンサート会場に不正に入場していた容疑で,懲役1年6ヶ月(執行猶予3年),罰金30万円等の有罪判決が下った。
不要になったグッズやチケットを安全に売るにはどうすればよい?

不要になったチケットやグッズの取引は,さまざまなトラブルがつきものです。
買う側・売る側双方が安全に取引を行うにはどういったことに注意すればよいでしょうか。
チケットを譲りたい

仕事の予定が入ってしまって,来週の試合に行けそうにない
チケット取ったけどもったいないから誰か代わりに行ってほしいな
いらなくなった推しのグッズを売りたい



忙しくてキャラクターへの熱が冷めてしまった・・・。
たくさんあるから捨てるよりも,大切にしてくれる他のファンへ譲りたいなあ
不正な転売等の相談窓口
相談先 | 詳細 |
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消費生活センター | 最寄りのセンターに全国共通で自動で繋がる番号(188)があります。 チケットの転売やフリマアプリ等消費者トラブルの相談窓口があります。 土日でも対応してくれる地域もあります。 |
国民生活センター | 国民生活センターは国が運営する機関で、消費者問題全般を扱う中核的な役割を担っています。 また国民生活センターは土日祝日も利用可能です。 |
警察署 | チケット代金をだまし取られた,代金を支払ったのに写真とは違う偽物のグッズが発送されたなどの場合は警察への相談も視野にいれましょう。 警察相談専用ダイアル:#9110 |
まとめ


推し活は、私たちの生活に喜びや活力を与えてくれるほか,経済の活性化も見込める素晴らしい文化といえます。
しかし、人気イベントのチケットやグッズの転売が問題視される中で、健全な楽しみ方を意識することが重要になっています。
まず、転売された高額チケットやグッズを購入しないことが、推しを守ることにつながります。
公式が認めたリセールサービスや抽選販売を活用すれば、不正な転売を助長せずに推し活を楽しむことができます。
また、ファン同士の助け合いも大切です。定価での譲渡を行うことを勧め合ったり、推しの公式情報をチェックして正規ルートで購入する習慣をつけたりすることで、転売の被害を減らすことができます。
企業側も電子チケットや本人確認の強化など、転売防止策を進めていますが、ファン一人ひとりの行動が未来の推し活を健全なものにする鍵となります。「推しを応援したい」という気持ちを正しく形にし、ルールを守りながら楽しむことこそ、推し活の理想の姿なのではないでしょうか。