
全国で深刻化する空き家問題|空き家を放置する問題点と有効活用する方法について解説!

日本全国で空き家の増加が深刻な社会問題となっています。
総務省の調査によると、2024年時点で全国の空き家数は約900万戸となり、住宅全体の約14%が空き家になっているといわれています。このまま対策が進まなければ、2040年には日本の住宅の3割以上が空き家になる可能性があるとも指摘されています。
では、なぜ空き家は増え続けるのでしょうか? その背景には、高齢化や人口減少、相続問題、都市部への人口流出といったさまざまな要因があります。
そして、空き家を放置すると、固定資産税の増額や行政代執行による強制撤去など、法律上のリスクが発生することもあるのです。
今回は空き家問題に焦点を当て、所有者が知っておくべき法改正のポイントや対策について詳しく解説します。
空き家は何が問題なの?

空き家は年々増加していると記載しましたが,空き家が増加している理由や問題点はなんでしょうか?
空き家が増加している要因
空き家増加の背景には、人口減少や高齢化・相続放棄・都市部への人口集中などがあります。
高齢化と人口減少
高齢化が進んでいる日本では,高齢者が亡くなった後,相続した住宅に住む人がいないことが増え結果的に空き家になってしまうケースが多いです。
特に地方では若者が進学や就職で都市部へ流出し,そのまま戻らず生活してしまうため,親の家がそのまま放置されてしまうことが多くなっています。
また最近では高齢者の介護施設入所や長期入院により,そのまま空き家となってしまうこともあるようです。
相続問題
空き家の問題には相続が関係することもあります。
例えば,相続した家を「売る・貸す・住む」いずれの判断もできないまま、相続人同士の話し合いが進まず、放置されたり
地方の不便な場所にある住宅は、需要がなく売却も難しいため、「負動産」(価値のない不動産)として維持するだけで固定資産税や管理コストが発生します。
また、相続を放棄した場合でも、次の管理者が決まるまでは相続人に最低限の管理責任が生じるため、その間に放置されることも問題になっています。
中古住宅が売れない
日本では新築住宅が好まれる傾向が強く、新築マンションや戸建ての供給が続いており中古住宅の買い手がつきにくくなっています。
特に築年数が古い物件に関しては,リフォーム費用が発生するためさらに売却が困難になります。
空き家を放置することによる問題点は?

放置された空き家は様々な社会問題を引き起こす要因となります。
具体的には
- 自然災害による倒壊リスク
空き家の老朽化により,地震や台風等の自然災害で倒壊するリスクが高まります。
また,不法投棄や放火のターゲットとなりやすく火災の原因となることもあります。 - 不法侵入や犯罪の温床になる
長期間放置されている空き家は不審者やホームレスが不法侵入することもあります。
また,居住者がいないため,空き家で犯罪が発生しても気づかれにくい点も問題となっております。 - 維持費や固定資産税など経済的な負担増加
「住宅用地の特例」により一般的な住宅は固定資産税が軽減されますが,特定空き家に指定された場合には,優遇がなくなり,固定資産税が増額します。 - 行政の負担増加
空き家は異臭や害虫等が発生した場合,行政にクレームが行くことが多いです。その対応に多くの費用や人手が必要となってしまいます。
また特定空き家と判断された場合,自治体が所有者に変わって撤去することとなります。その費用は所有者に請求され多額の負担が発生します。
空き家所有者が負う法律上の責任は?

空き家の所有者には、適切な管理責任が法律で定められています。
空き家問題への対応を目的として、2014年に「空家等対策特別措置法」(通称:空家法)が制定されました。
この法律の主な目的は、空き家の実態調査や所有者への管理指導、跡地の有効活用を推進することです。
また、この法律では適切に管理されていない空き家を「特定空き家」に指定し、指導・勧告・命令、さらには行政代執行の措置が可能です。
令和5年(2023年)には改正が行われ、空き家の除却や活用、適切な管理措置をさらに強化する内容が盛り込まれました。これにより、自治体が所有者に対して抜本的な対応を求めるケースが増加しています。
特定空き家とは
「空き家等対策特別措置法」に基づき、管理を怠った空き家は「特定空き家」に指定される可能性があります。
特定空き家に指定されると、市区町村から指導や勧告を受けるだけでなく、命令に従わない場合には行政代執行による強制解体や撤去が行われることもあります。
また、固定資産税の軽減措置が適用されなくなるため、税負担が増加することも考えられます。
特定空き家の基準としては周辺環境や住民に悪影響を及ぼす状態が含まれます。
例えば、建物の構造が著しく劣化し、倒壊や外壁材の落下の危険がある場合や、雑草の繁茂やゴミの放置で景観が著しく悪化している場合などが挙げられます。
2023年の「空家法」の改正内容
2023年6月に「空家法」が改正され,所有者は空き家を適切に管理する責任を強く問われることとなりました。
「管理不全空き家」の新設
これまで空き家の規制対象は「特定空き家」のみでしたが、新たに管理不全空き家という区分が追加されました。
管理不全空き家とは,著しく劣化しており,今後倒壊等の危険性が高まっている空き家や,雑草やゴミ等の管理が不十分になされていない空き家のことを指します。
管理不全空き家に指定された場合には,固定資産税の増額や自治体から指導や勧告を受けることがあります。
行政の権限強化
法改正前は行政代執行を実施するまでに,所有者に対して指導・勧告・命令等行政側で多くの手続きを踏む必要がありました。
しかし,改正後は今にも崩壊しそうな物件など,早急に対処すべきものについては,途中の手続きを踏まずに行政代執行ができるようになりました。(緊急代執行)
空き家の活用を促進する仕組み
空き家の放置を防ぐため,空き家の売却を支援する制度を創設したり,リノベーション等空き家の活用を促進する仕組みが整備されました。
空き家問題を未然に防ぐには?

空き家を放置することで、所有者や行政,近隣住民それぞれにリスクがあることを説明しました。
将来実家を相続した際に,その物件が空き家になってしまう可能性がある場合には,今のうちに出来る対策を講じておくのもよいでしょう。
空き家状態を未然に防ぐためには、定期的に物件の状態をチェックし適切に管理することが重要です。
特に、外壁や屋根の劣化・雨漏り・害虫の発生などを早めに発見して対処することで、建物が大きく損傷するのを防ぎます。
定期管理が難しい場合には管理委託サービスを利用したりすることで、空き家が持つリスクを大幅に軽減できます。
また,相続により空き家を所有することとなった際、そのまま放置すると資産価値が下がるだけでなく、固定資産税などの維持コストが増える可能性があります。
これを防ぐためにも、早期に活用方法や処分方法を検討することが重要です。放置期間が長くなるほど活用方法が限られるため、相続後は迅速に対応する必要があります。
その他空き家問題を効果的に解決するには、不動産業者や建築士・司法書士といった専門家に相談しながら適切な対応を進めることが重要です。
また、自治体による支援制度や空き家活用の相談窓口を活用することも推奨されます。例えば、自治体では老朽化した空き家の解体費用の一部を補助する場合があります。こうした専門家や公的機関との連携は、法律問題に発展するリスクや管理に係る手間の削減につながります。
空き家を上手に活用する方法


祖父の代から所有していて,手放すのはなんだか惜しいなぁ。
立地も悪くないし何かに有効活用できないだろうか・・・
このように空き家を手放すことをためらっている方が多いのも事実です。
売却や解体という選択肢だけでなく,自治体の空き家バンクを利用したり,賃貸運営や,地元住民の憩いの場として新しく使えるようにする等さまざまな活用方法があります。
空き家バンクを活用する
空き家バンクは、自治体や地域団体が運営する空き家情報の登録・公開システムです。
この仕組みを活用することで、所有者は空き家の売却や賃貸を希望する場合に効率よくマッチングを進められます。
例えば、地方移住を希望する人が空き家バンクを通じて理想の物件を見つけ、新たな生活を始めるケースが増えています。また、自治体によっては補助金や家賃減額などの支援が付いた優遇措置も提供されています。
賃貸運営として転用する
老朽化した空き家をリフォームすることで、資産価値を高め再び活用する方法があります。
耐震補強や外壁の修繕、室内の改装を行うことで、居住用住宅として利用することが可能になります。実際に、多くの地域でリフォーム後に賃貸物件として提供する成功例が増えてきています。また、こうしたプロジェクトには国や自治体の補助金や助成金が活用できる場合もあります。
また,空き家を賃貸物件として転用することは、安定的な収入源を得られる可能性があります。
コミュニティスペースや観光施設として活用する
空き家は、地域住民や観光客向けのコミュニティスペースやカフェ・民宿・ギャラリーなどに再利用することも可能です。
空き家を活用して観光施設に転用することで、地域振興や商業活動の活性化に貢献できます。特に観光地では、歴史ある建物を再利用して伝統文化を体感できる場所にする事例も見られます。
まとめ


空き家の問題は高齢化や人口の都市部への集中により,年々深刻化しています。
空き家を放置すると,倒壊・犯罪リスクや税負担の増加につながるため売却・賃貸などの選択を早めに検討することや,自治体の空き家活用方法について情報収集をしておくことが大切です。
また,不動産のある遺産分割協議がまとまらず長期化している場合,その協議中にも不動産の劣化が進行します。
被相続人が元気なうちに,不動産をどうするか相続人や被相続人を交えて話し合っておくのもよいでしょう。
所有している空き家の処理方法に悩んでいる方は,専門家へ相談することをおすすめします。