相続について-相続が発生したらどうする?-

目次

相続が発生したら知るべきこと

親族が亡くなると発生する相続問題。
そもそも「相続って何?」 「相続できる人は何人いるの?」「財産はどれだけあるんだろう・・・」等
初めて経験する場合にはわからないことばかりで大変だと思います。
また相続は完了するまでに多くの手続があり、期限付きのものもあるためとても複雑です。
相続手続については、専門知識のある弁護士に相談するとよいでしょう。

法定相続とは?

財産のある方が遺言せずに亡くなると、民法887条から890条により定められた相続人が、民法900上に従って、一定の相続分を相続することになります。
これを法定相続といいます。

法定相続人にはどれだけ分配される?

法定相続によって相続人に相続される相続財産の割合を法定相続分といいます。
ですから法定相続分を知ることは、誰にいくら相続されるのかを知るひとつの目安となります。

法定相続人の順位及び法定相続分一覧

順位法定相続人法定相続分  
1子と配偶者子=1/2配偶者=1/2
2直系尊属と配偶者直系尊属=1/3配偶者=2/3
3兄弟姉妹と配偶者兄弟姉妹=1/4配偶者=3/4

この表をわかりやすくイラストで表すとこうなります。

法定相続人の第一順位

法定相続人の第二順位

法定相続人の第三順位

また、被相続人が遺言書を作成していない場合は、法定相続で以下のことが決められています。
・配偶者は常に相続人
・直系尊属は、子どもがいない場合の相続人
・兄弟姉妹は、子と直系尊属がいない場合の相続人

相続人になれない場合とは

本来なら相続人になれる資格があった人でも、以下のような事由がある場合には、遺産を相続することが出来ません。

相続人が死亡している

相続人が被相続人より先に死亡した場合、または同時に死亡した場合には遺産を相続することは出来ません。

相続権の欠格

以下の事由に該当する場合は、裁判所へ申立をせずとも相続権がなくなります。

  • 被相続人や、自分より相続の順位が上位の相続人または同順位の相続人を故意に殺害(未遂も含む)して刑に処せられた場合
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴しなかった場合
  • 詐欺や脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言を作成・取消・変更しようとするのを妨げた場合。
  • 詐欺や脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言を作成・取消・変更させた場合
  • 被相続人の相続に関する遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合
相続廃除

相続欠格のように、当然に相続権がなくなるわけではありませんが、被相続人を虐待したり、重大な侮辱を与えたり,相続人に著しい非行があった場合などに、家庭裁判所が相続権を剥奪するというものです。
廃除をするためには、被相続人本人が、生前に家庭裁判所に申し立てて、審判を受ける必要があります。
遺言で廃除の意思表示をしていたような場合には、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てることになります。


相続できる財産

相続財産となるものは、被相続人の財産に属した一切の権利義務が対象となります。

「一切の権利義務」というのは、被相続人が置かれていたすべての立場と考えても結構です。

ですが、財産のなかには相続財産に該当しないものもありますので注意が必要です。

相続財産の代表的なもの
  • 土地、建物など不動産の所有権
  • 家財道具、自動車、貴金属、現金、預貯金など動産の所有権
  • 土地や建物の賃借権、売掛金などの債権
  • 特許権、商標権、意匠権、著作権などの無体財産権
  • 契約上の地位
相続財産ではない代表的なもの
  • 生命保険金請求権
  • 死亡退職金
  • 香典

なお、上記のような相続財産ではないものについても、生命保険金、死亡退職金などは、「みなし財産」として相続税が課せられますから、注意が必要です。

遺産の評価の基準時と方法

相続人間で、遺産を公平に分配するためには、その前提として遺産の価値を把握しておく必要があります。

評価の基準時

遺産の価格をいつの時点で評価するかについては、相続開始時と考える説と遺産分割時と考える説がありますが、遺産分割時とするのが実務の大勢です

不動産の評価

遺産のうちで最も評価が争われるのは、不動産、特に土地です。

不動産の評価方法としては、以下の3つの方法がありますが、対象不動産の類型に応じて、これらを併用するなどして、総合的に判断します。

① 比較法

同種、同規模の不動産が市場において取引される価格との比較において価格を算定する方法

② 収益還元法

当該不動産を利用することによってどの程度の収益が得られるかに着目して、その収益を期待利回りで除して資本還元することにより価格を算定する方法

③ 原価法

当該不動産の再調達原価について減価修正して価格を算定する方法

しかし、これらの方法を実践するためには、専門知識を要するため、
簡易な方法として、地価公示価格、相続税路線価、固定資産税評価額等を参考に、評価することもあります。

株式の評価方法

上場株式

実務においては、遺産分割時に最も近接した時点での最終価格(終値)等によって算出することとし、
日刊新聞や東京証券取引所のホームページのマーケット情報等を参考にします。

非上場株式

以下のように、会社法上の株式買取請求における価格や税務上の評価基準を参考にします。

1 会社法上の株式買取請求における株価算定方法

① 純資産方式

会社の総資産価格から負債等を控除した純資産価格を発行済株式数で除して評価する方法

② 配当還元方式

会社の配当金額を基準として、これを発行済株式数で除して評価する方法

③ 類似業種比準方式

会社と類似する業種の事業を営む会社群の株式に比準して評価する方法

④収益還元方式
将来の予想年間税引後純利益を資本還元率で除したものを発行済株式数で除して評価する方法

⑤ 混合方式

これらの方法を組み合わせて評価する方法

2 税務上の評価基準

相続人が同族株主になる場合、会社を大中小の区分に分け、大会社は類似業種比準方式(選択により純資産方式も認める)が適用され、中会社は類似業種比準方式と純資産方式とを併用して計算し、小会社は純資産方式によるものとされています。

同族株主にならない場合は、配当還元方式によるものとされています。

ただし、当事者間で価格の合意が成立しない場合には、公認会計士等の専門家の鑑定で価格を決定します。


相続手続でお困りの方

相続が発生した場合、必要な手続は50~100個以上もあると言われています

代表的なものは、不動産の名義変更や、預貯金の名義変更等ですが、それ以外にも生命保険や、死亡退職金等の手続があります。

遺産分割協議がまとまったとしても、必要な手続をしなかったために、もらえるものがもらえなかったり、後々トラブルになることもあります。

特に不動産の名義変更をしておかないと、後々トラブルになるケースが多くあります。

相続人調査と財産調査

相続人調査とは?

相続は亡くなった方から相続人への財産などを移転することですから、そもそも相続人が誰なのかが分からなければ手続はできません。想像もしなかったような人が相続人になることも少なくはありません。「調べなくても大丈夫だろう。」と考えでいると、思わぬ事態に陥ってしまう危険性があります。

しっかりと誰が相続人であるかを把握することが重要です

誰が相続人なのかを調べるためには、まずは、亡くなった方の「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」等を出生から死亡まですべて取得する必要があります。

相続財産調査とは

相続は、色々な財産や権利・義務をそのまま受け継ぐということです。

相続人は自分の相続したい財産の一部分だけを相続することはできません

亡くなった人が持っていた財産や権利・義務のすべてが相続することになりますから、借金も一緒に相続しなければいけないのです

ですから、相続財産全てを調査する必要があります。

相続財産には3種類あります
  • 相続財産 ・・・・・・遺産分割の対象になる財産 
  • みなし相続財産 ・・・相続税の課税対象になる財産
  • 祭祀財産 ・・・・・・相続財産にも、みなし相続財産にもそのどちらにもならない財産

預貯金の名義変更

被相続人の預貯金を相続しても、名義変更か解約手続きをしないと、原則として、お金を引き出すことが出来ません
そして、どちらの場合にも、相続人全員の承諾書や印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要になります

※金融機関が預貯金者の死亡を知らなければ、たとえ相続人でなくとも通帳と印鑑を持参した人に支払ってしまうこともあり得ますので、預貯金者が死亡したことは速やかに銀行等に知らせて下さい。

預貯金の名義変更に必要な必要書類(主なもの)

遺産分割協議を経て名義変更する場合の主な必要書類

① 各金融機関の所定の名義書換請求書ないし払戻請求書

② 遺産分割協議書

③ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本)

④ 各相続人の戸籍謄本

⑤ 相続人全員の印鑑証明書

⑥ 被相続人の預貯金通帳と届出印

※ 金融機関によって用意する書類が異なる場合もありますので、どのような書類が必要になるのか、直接、金融機関に問い合わせて下さい。

遺産分割調停・審判を経て名義変更する場合の主な必要書類

① 各金融機関の所定の名義書換請求書ないし払戻請求書

② 遺産分割調停調書正本または遺産分割審判書正本(確定証明書付)

③ 各相続人の戸籍謄本

④ 被相続人の預貯金通帳と届出印

※金融機関によって用意する書類が異なる場合もありますので、どのような書類が必要になるのか、直接、金融機関に問い合わせて下さい。 

不動産の名義変更手続き

相続が起こった場合、被相続人名義の不動産登記簿を相続人名義に変える手続きをしなくてはなりません。

不動産名義を変更しないと、後々トラブルになりかねません。
例えば、被相続人の不動産を何らかの形で手に入れた第三者が、相続人よりも先に登記を行うと、相続人がその不動産の所有権を失うこともあり得るのです。

相続した不動産を確実に自分のものにするためにも、不動産の名義変更手続きはできるだけ速やかに行って下さい。

遺産分割前

相続に伴って行う不動産登記の変更は、相続登記とよばれています。
相続登記の申請は、登記しようとする不動産所在地を管轄する登記所に行います。

相続登記は、相続人であれば誰でも単独ですることができます。

遺産分割後

遺産分割前に相続登記がされていない場合

遺産分割前に、登記の名義が被相続人のままになっている場合には、遺産分割協議等によって不動産を相続することに決まった相続人が、単独で移転登記をすることができます。
この場合、登記原因は、「相続」となります。

遺産分割前に相続登記がされている場合

遺産分割協議等によって不動産を相続することに決まった相続人が登記権利者となり、他の共同相続人が登記義務者となります。
そこで、両者が共同して登記申請をします。
この場合、「遺産分割」を登記原因として、ほかの共同相続人の持分を単独の所有権者になった相続人に移転する旨の登記をすることになります。

相続人に負債があったら?相続破棄と限定承認

遺産に借金があるような場合は,相続放棄か限定承認を検討します。

相続放棄

たとえば,マイナスの財産が明らかにプラスの財産を上回る場合や,相続争いに巻き込まれたくな
い場合,相続人は,相続を放棄することが可能です。
相続を放棄する場合,相続人になったことを知った日から3ヵ月以内に,相続放棄する旨を,
家庭裁判所に申述しなくてはなりません。

限定承認

相続人が得たプラスの財産の範囲内で,被相続人の借金を返し,残った財産を相続できます。
たとえば,マイナスの財産が多い場合には,プラスの範囲内で債務を返済し,残りの債務を返済をせず
に終了できます。つまり,限定承認者は,相続財産の限度を超えて債務を返済する必要はなくなります。

限定承認する場合,相続人になったことを知った日から3ヵ月以内に,限定承認する旨を,
家庭裁判所に申述しなくてはなりません。

3ヶ月経過後の相続放棄

相続放棄や限定承認の判断は、相続発生を知ってから3ヶ月以内にしなければなりません。

しかし、3ヶ月という短期間で、全ての相続財産を確認し、プラスかマイナスかを判断することはなかなか難しい場合があります。


例えば、被相続人が全国各地で様々な事業を行っていた場合や、複数ヶ所の不動産を所有していた場合、すべての資産と借金を3ヶ月で把握するのは困難です。

このような場合は、相続放棄の期間を延長してもらうことができます

相続について利害関係を有する人が家庭裁判所に請求することにより、この期間を延長することができます。
ですから、借金が多いのか資産が多いのか直ちにははっきりしないために、相続放棄の決断がつかず迷っている場合には、この延長の請求をおすすめします。

その他、相続人が、相続財産が全く存在しないと信じ、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態等からみて、相続人が相続財産の有無を調査するのが著しく困難な事情等がある場合には、相続放棄の熟慮期間は、例外的に相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識し得る時から起算されることもあります。

やむを得ず3ヶ月を過ぎて、相続放棄の必要性が生じた場合は、弁護士にご相談ください。

(あらかじめ、不可能な場合もあることはご了承ください。)

限定承認について

限定承認とは、債務のうち相続財産を超える部分の返済義務を引き継がない方法です。

つまり、相続の承認はするけれども、相続債権者のために相続人自身の財産まで提供して債務を弁済するということはせずに、被相続人から承継する相続財産の限度で、被相続人の債務の支払いをするという、限度付きの相続のことです。

限定承認が有効なケースとしては、以下のようなものが考えられます。
  • 債務が超過しているかどうかはっきりしない場合
  • 債務を加味しても、どうしても相続したい相続財産があるような場合(自宅等)
  • 家業を継いでいくような場合に、相続財産の範囲内であれば債務を引き継いで良いというような場合
  • 再建の目処がたってから返済する予定であるような場合
限定承認をする場合は、以下のような手続きが必要となります。

1)相続人全員の総意が必要となります。

2)相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に「限定承認の申述審判申立書」等を家庭裁判所に提出します。

いずれにしても、相続が発生した早い段階から、相続人の確認、相続財産の確認を調査して、相続しても良いものなのか、するべきではないかの判断ができる状態を作ることが重要です。

個別のケースについては、専門家である弁護士にご相談ください。

ご相談予約

代表弁護士渡辺がお話を伺い、
最後まで責任を持って担当いたします。
安心してご相談ください。

法律相談料:5,500円/30分

受付:平日9時〜18時

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