
仕事を辞めずに育児や介護を続けるには?両立の課題と育児・介護休業法の改正ポイントについて解説

「仕事と家庭の両立」は多くの人にとって重要な課題です。
特に、出産や育児・介護が必要になったとき、働きながらどのように対応すればよいのか悩む方も多いでしょう。そんなときに知っておきたいのが、「育児・介護休業法」です。
この法律は、育児や介護を理由に仕事を辞めずに済むよう、休業制度や労働環境の整備を義務付けたもので、企業にも従業員にも大きく関わる内容となっています。特に近年の法改正により、男性の育児休業取得促進や仕事と子育て・介護の両立支援の強化が進められています。
本コラムでは「介護・育児・仕事」を取り巻く課題についてや,2025年4月施行の育児・介護休業法の改正ポイントについて解説します。
子育てや介護をしながら働くことはとても大変・・・

日本において、共働きをしながら子育てをすることは一般的なライフスタイルとなっています。
近年、女性の社会進出が進み、共働き世帯は年々増加していますが、その一方で育児と仕事の両立に苦労する家庭も多く、社会全体での支援が求められています。
現在の日本が抱えている家庭と就労の社会問題
日本では労働力不足の影響から定年退職年齢の引き上げが進んでいます。
特に企業に対しては「70歳までの就労機会確保」を努力義務とした法律(高齢者雇用安定法)が施行されています。
定年退職年齢が引き上がると,高齢の家族の介護をしながら就労している人も発生します。このような人をビジネスケアラーと呼びます。
さらに,日本は高齢化が進行していることもあり,働きながら介護を行う人は増加することが予想されます。
また最近では、晩婚化・高齢出産の増加により,子育てのタイミングが家族の介護と重なってしまう“ダブルケア”も社会問題となっております。
ダブルケアの問題点としては,「育児・仕事・介護」でお世話をする人の負担が大きいことや,育児費用+介護費用で家計の負担が大きいこと,周囲に頼れず社会的に孤立してしまうことが挙げられます。
このように子育て・介護と仕事の両立は簡単ではなく,心身の負担やキャリアアップの機会の遅延など様々な課題があります。
子育てと就労の両立の課題
- 家事・育児・就労の両立によるストレス
家事・育児・就労を両立することは簡単ではありません。
特に子どもが幼い頃は,お世話に手がかかりますし,睡眠不足に陥ることもあります。
また,夫婦ともに忙しい場合,家庭内でコミュニケーション不足となり,それがストレスとなってしまうことよくあります。 - ワンオペ育児の負担
夫婦共働きであっても,女性が育児を負担する割合が大きいことはよくあります。
子どもの体調不良による急な休みを取得する等育児に時間を多くとられてしまう場合,女性のキャリア継続が困難に陥ることがあります。 - 労働時間や柔軟な働き方が困難
残業が多い企業では,育児時間の確保が難しい場合があります。
また職種によっては在宅勤務ができない職種もあり,子どもと向き合う時間が減少してしまいます。
介護と就労の両立の課題

- 介護と就労の両立による精神的・肉体的不安
介護は食事や病院の付添,入浴など想像以上に時間がかかる他,認知症の徘徊や体調急変など,急な対応が必要になることがあります。介護は24時間気が抜けず,精神的・肉体的に疲弊してしまいます。
また,介護の長期化や認知症の介護をしている方は介護うつを発症することもあります。 - 収入の減少やキャリアへの影響
2021年の厚生労働省の雇用動向調査によれば,介護を理由に退職をした人は9.5万人だったことが発表されています。
離職のほか時短勤務や転職を余儀なくされ,収入が減少する世帯も少なくありません。 - 介護費用の負担
介護には毎月多額の費用がかかります。介護サービスを利用したくても費用の工面がむずかしく,ご自身で家族の介護をされる方もいらっしゃいます。
育児・介護休業法の改正で何がかわる?

2025年4月1日より施行される育児・介護休業法の改正では、労働者が育児や介護と仕事を両立しやすい環境を整備することを目的としています。
主要な点について以下にまとめました!
育児期の働き方の見直し
- 子の看護休暇の見直し
従前は未就学児までが対象でしたが,小学校3年生修了時までと子の看護休暇の対象範囲が拡大しました。また,看護休暇取得事由に感染症に伴う学級閉鎖や入学(入園)式,卒園式が追加されました。 - 所定外労働の制限(残業免除)の拡大
従前は3歳未満の子を養育する労働者が対象でしたが,施行後は”小学校就学前の子を養育する労働者”と範囲が拡大しました。 - 短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加
介護離職防止のための取り組み
- 介護休暇を取得できる要件の緩和
介護休暇取得の要件として6ヶ月以上の継続雇用期間が必要となっていましたが,この要件が撤廃されました。 - 介護離職防止のための個別の周知・意向確認
- 介護のためのテレワーク導入
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるようにする努力義務が追加されました。
介護・育児と仕事を両立するためには

育児・介護を両立するためには“頼れるものには頼る”ことが大切です。
保育・介護サービスの積極的な利用
介護であれば,訪問介護・デイサービス・ショートステイを活用を検討しましょう。
費用面で心配になる方もいらっしゃると思いますが,要支援・要介護認定を受けた人を対象に介護保険制度による介護サービスの助成が出ることもあります。
自治体独自での介護助成制度がある地域もあるため,お住まいの自治体へ確認してみましょう。
また介護休業を取得した場合,介護休業給付金として,給与の最大67%が支給される制度もあります(但し日数に限度有り)。
育児であれば,ファミリーサポートセンターや一時預かり,また最近では産後の母親の心身ケアや家事の支援を行う産後ケア事業もあります。
東京都ではベビーシッターを利用した場合、補助がでる自治体がありますので利用してみるのもよいかもしれません。
1人で抱え込まず,それぞれの分野のプロに任せることが大切です。
周囲への相談
介護や育児はかならず1人で行わなければならないものではありません。
家族や友人に相談し「自分だけでやらなくていい」環境を作りましょう。
また介護・育児は相談窓口や専門機関がたくさんあります。
ご自身が疲れ切ってしまう前に,地域包括支援センターや保健センターへ困っていることを相談することが大切です。
育児・介護休暇をとりやすい職場づくりも大切!

ビジネスケアラーやダブルケアが社会問題となっている中で,企業はどのような対策を講じるべきでしょうか。
柔軟な勤務体系
育児・介護休業法にもあるようにテレワークや在宅勤務を推進することで,育児や介護をしながらでも仕事を続けられる環境を整えることが大切です。
そのほか時短勤務やフレックスタイム制度を導入し,通院や送迎などに柔軟に対応することが必要です。
また男性への育児休暇取得促進や,介護休業法に基づく介護休暇の利用・取得推進を行うこともよいでしょう。
介護・育児の独自支援制度
最近では介護や育児の独自支援制度として,介護費用(介護サービス利用料含む)や保育費用の一部を補助する企業も増えてきているようです。
事業所内の託児所設置や,保育施設と提携契約を行うことで,待機児童問題に悩む従業員の負担を軽減することもできます。
他の従業員に対する理解促進
介護休暇や育児休暇を取得したくても周囲の理解が得られない・・・このような事態を防ぐためには,全従業員に育児・介護と仕事の両立支援の重要性を周知させることが大切です。
企業が従業員の仕事と介護の両立を支援することは,生産性向上や離職防止に繋がるのです。
また企業が育児や介護と仕事の両立支援を行う場合,厚生労働省の助成金制度を利用できます。詳細は下記リンクをご覧ください。
まとめ

育児や介護と仕事の両立は、多くの人が頭を悩ませています。この問題は個人や家族ではなく企業や社会全体で解決すべき課題です。適切な制度を活用し,無理なく続けられるよう支援が必要です。
まずは,勤務先や自治体がどのような育児・介護支援を行っているかを調べてみましょう。
そこで自分が今どのような支援を必要としているかを選択し,利用することが望ましいです。
また社内全体が,育児・介護への理解を深めておく必要があります。
企業としては,定期的に制度に関する研修を行う他,育児休暇・介護休暇の取得の促進を図っていくことが必要です。
最後になりますが,介護・育児は負担が大きく,悩みを相談できず孤立化しやすいです。
1人で頑張ろうと思わず,辛いときは周囲に助けを求めることが最も大切なことです。