
お局による嫌がらせはパワハラ?女性同士の職場トラブルと効果的な対処法を解説

“お局”という存在はどこの職場にも1人はいると言われています。
長年勤めていて発言力があり、気に入らない部下や後輩に対して陰湿な態度を取る……そんな人物に悩まされた経験はありませんか?
無視されたり、わざと仕事を回されなかったり、陰で悪口を言われたりといった嫌がらせが日常的に続くと、精神的に大きなストレスとなり、仕事に支障をきたすこともあります。
一見すると単なる女性同士の人間関係のいざこざに見えるかもしれませんが、内容や頻度によってはパワーハラスメント(パワハラ)に該当することもあります。
問題なのは、こうした嫌がらせが「昔からあることだから,あの人はそういう人だから・・・」と見過ごされてしまいやすい点です。
しかし、それを我慢し続ける必要はありません。
本記事では、お局による嫌がらせの具体例から、それがパワハラにあたるかどうかの判断基準、そして実際に取れる対処法や法的措置についてわかりやすく解説していきます。
女性同士の職場トラブルがこじれやすい理由は?

女性が多い職場では,「表立っては言わないけど内心では…」という“静かな敵意”が存在しやすいと言われています。
仕事の評価や人間関係が感情と密接に結びつく場面が多く,仲間外れや陰口といった“見えにくい攻撃”が起こりがちです。
さらに,感情的な対立が表面化しにくいため,上司や人事も問題に気づきにくく,かつ解決が後手に回るケースも少なくなく,結果として、被害者がひとりで悩みを抱え込む状況に陥りやすいのです。
お局はなぜ面倒な存在なのか?
そもそもお局という言葉は、江戸時代の大奥(将軍家の女性たちの居住区)で局(つぼね)と呼ばれる部屋を与えられた身分の高い女性に由来します。
経験豊富で内情にも精通し,他の女性たちに大きな影響力を持っていた存在です。
現代の職場で「お局」と呼ばれる人もこの“大奥”におけるポジションと重ねてそう呼ばれています。
職場に長く在籍し,暗黙のルールや“自分流のやり方”に強いこだわりを持っている傾向があり,変化や新人の登場を快く思わず,「自分の居場所が脅かされてしまう」と感じたときに,攻撃的な態度に出ることが少なくありません。
また,長年の経験があることで周囲も強く注意しづらく,結果的に“誰も逆らえない存在”として君臨してしまうのが問題です。
職場全体が萎縮し,健全なコミュニケーションが失われる温床となります。
よくあるお局や女性同士の嫌がらせ

「お局による嫌がらせ」と聞くと,漠然としたイメージを持つ人も多いかもしれませんが,その言動は驚くほど具体的で,日常業務に深刻な悪影響を及ぼすことがあります。以下は,実際によく見られる嫌がらせの一例です。
- 無視や陰口,情報の共有拒否
気に入らない同僚をわざと無視したり,職場内で悪意のある噂を流す行為。必要な業務連絡を故意に伝えないといった、情報の遮断もあります。 - 仕事を回さない/過剰に雑務を押しつける
あえて仕事を与えず成長の機会を奪う,または逆に大量の雑務や責任を押しつけて精神的に追い詰めるケースも見られます。 - 他の上司の前であえて叱責・評価を下げるような発言
上司や同僚の前でわざとミスを大げさに取り上げたり,「あなたは使えない」などと評判を落とすような発言をすることもあります。
お局の嫌がらせはパワハラになる?判断基準と法律上のポイント

お局からの嫌がらせに悩んでいても,「これって本当にパワハラなの?」「ただの人間関係のもつれじゃないのか」と感じてしまい,なかなか行動に移せない人も多いでしょう。
ですが一定の基準を満たす場合,その行為は法的にパワハラと認定される可能性があります。
パワハラの定義
厚生労働省は,パワハラの定義として以下の3つの要素を挙げています。
- 職場での優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
- 労働者の就業環境を害する行為
例えば,長年勤務していて立場が強いお局が,気に入らない部下に対して日常的に無視をしたり,仕事を回さなかったりといった行為をする場合は上記の要件のすべてを満たす可能性があります。
さらにパワハラは6つの類型に分類されており,お局からの嫌がらせは以下の類型に該当することが多いです。
- 精神的な攻撃(例:人前での叱責・陰口)
- 人間関係からの切り離し(例:無視・仲間はずれにする)
- 過小,過大な欲求(例:仕事を与えない,大量の業務の押しつけ)
これらの行為が継続的に行われ,被害者が精神的苦痛を感じている場合には,労働法上の職場のハラスメントにあたる可能性が高くなります。
「その時たまたま機嫌が悪かっただけ」では済まされないこともあるため,嫌がらせが繰り返されている場合は客観的に記録しながら冷静に状況を見極めることが大切です。
パワハラに関する基礎知識はこちら

お局による嫌がらせにあったときの対処法

お局からの嫌がらせに気づいても,すぐに声を上げるのは勇気がいることと思います。
自分が悪いのかも,大ごとにはしたくない・・・と我慢する人も多いですが,この問題を放置すれば事態は悪化し,自分を追い込むことになりかねません。
ここでは無理なく始められる現実的な対処法を紹介します。
まずは証拠を集める
嫌がらせの言動は主観的になりがちなため、客観的な証拠の確保が重要です。たとえば以下のような方法があります。
- 嫌がらせの日時・内容・場所・相手を書いた記録メモ(日記形式でもOK)
- 周囲の人の証言が得られそうな場合は相談のやりとりの記録
- 会話の録音や,嫌がらせメール/チャットのスクリーンショット
一度や二度の出来事でも,繰り返されることでパワハラと認定されやすくなります。
時系列で記録しておくことで,状況や自分の気持ちも整理しやすくなります。
社内の相談窓口を活用
社内の信頼できる上司や人事担当者に相談しましょう。
最近ではハラスメント相談窓口を設けている企業も増えています。

社外の専門家への相談
社内で解決が難しい,もしくは対応してもらえない場合は,労働基準監督署や総合労働相談コーナーなどに相談するのも一つの手です。
無料で相談に乗ってもらえることも多く,状況に応じたアドバイスが得られます。
また,状況が深刻な場合や,会社が動かない場合には弁護士に相談することも選択肢の1つです。
慰謝料請求や労働契約上の保護を受けるための行動について,具体的なアドバイスを受けられます。
弁護士に相談と聞くとハードルが高く感じられるかもしれませんが,最近では,法テラスによる無料相談や電話相談を受け付けている法律事務所も多く,以前よりずっと相談しやすい環境が整っています。
会社の対応が不十分な場合はどうする?

お局による嫌がらせを会社に相談しても,「様子を見ましょう」「あなたにも原因があるのでは?」などと軽く扱われたり,明確な対処がなされないケースも少なくありません。
しかし企業には職場環境を適切に保つ安全配慮義務があり,それを怠れば法的責任を問われることもあります。
まず確認したいのは、会社にハラスメント防止措置義務があるかどうかです。2020年の法改正により,すべての企業にパワハラ防止のための体制整備(相談窓口の設置・再発防止措置など)が義務づけられました。
これに反する対応は,行政指導の対象にもなり得ます。
それでも会社が動かない場合は,証拠を持って労働基準監督署に申告するのが有効です。
監督署は企業への調査や是正指導を行うことができ,場合によっては改善を促す強力な働きかけになります。
さらに,弁護士に相談して法的手段を検討することも視野に入れましょう。
たとえば,会社が嫌がらせを放置して精神的苦痛を被った場合は,会社に対して慰謝料を請求することが可能なケースもあります。また,心身に不調をきたして診断書が出た場合には労災申請が認められる可能性もあります。
注意したいのは,被害が深刻化するほど選択肢が限られてきます。
だからこそ,「会社が頼りにならない」と感じた時点で,社外の専門家や機関への相談を早めに検討するのが,心とキャリアを守る一歩になります。
お局からの嫌がらせに屈しないために

お局からの嫌がらせはどこの職場でもあることと思い込んで,つらさを抱えたまま我慢していませんか?
しかしその我慢が続けば,心身の不調やキャリアの停滞につながる恐れもあります。
嫌がらせに気づいたら,まずは冷静に証拠を残し,信頼できる人や窓口に相談すること。
会社が動かない場合でも,労働基準監督署や弁護士といった社外の専門機関があなたの味方になってくれます。
誰かに相談することは,決して弱さではありません。
あなたの働く権利と尊厳を守るための当たり前の行動です。
理不尽な環境に自分を合わせるのではなく,「おかしい」と思ったその感覚を大切にして一歩踏み出す勇気を持ってみてください。