
悪質な口コミから事業を守る!名誉毀損・営業妨害に該当する口コミの見分け方と法的措置について解説

近年、Googleマップや食べログなどの口コミサイト、SNSなどに投稿される「悪質なクチコミ」に頭を悩ませる事業者が増えています。
星1の評価とともに根拠のない誹謗中傷が書かれてしまえば、実際にサービスを利用していない人の目にも触れ、売上や評判に大きな影響を及ぼします。
中には、競合他社や元従業員による嫌がらせのような投稿も見受けられます。
こうした口コミに対し、「泣き寝入りするしかないのか」と不安を感じる方も多いでしょう。
しかし、内容によっては名誉毀損や業務妨害として、法的に削除や投稿者の特定が可能な場合もあります。
本記事では、事業者が知っておきたい「悪質な口コミへの法的対応」について、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
口コミの影響力はどれくらい?

口コミは、今のネット社会では事業の売上・集客・信用に直結する重要な要素になっています。
消費者の約9割が商品やサービスを選ぶ際にネットの口コミを参考にしていると言われており,特に飲食・美容・医療・小売業界では,レビューの星の数や内容で来店・利用を決める人が多いのです。
また,ネガティブは情報はポジティブな情報に比べて2倍以上記憶に残ると言われているため,悪い口コミが増えることにより,売り上げが変動したり顧客を失ってしまう恐れがあるのです。
悪質な口コミとは?「単なる不満」と「名誉毀損・業務妨害」の違い

すべての低評価レビューが、すぐに違法になるわけではありません。
たとえば、「接客が悪かった」「料理が冷めた状態で提供された」といった個人の感想や事実に基づく指摘は、表現の自由として認められる範囲内とされています。
しかし、以下のような投稿は、名誉毀損や業務妨害などに該当する可能性があります。
- 「店長は客に暴力を振るう」など、虚偽の事実を断定的に記載
- 「この店はぼったくり。絶対に行かない方がいい」など、根拠のない断言
- 実際には来店していない人による投稿
- 同一人物が複数回、執拗にネガティブな投稿を繰り返している
こうした口コミは、事業者の社会的評価を下げ、客足に直接的な悪影響を及ぼすため、法的措置の対象となる可能性があるのです。
まずは「違法とされる可能性のある内容かどうか」を冷静に見極めることが、対応の第一歩となります。
削除請求はできる?手順と現実的なハードル

悪質な口コミに対して、まず検討したいのが「削除請求」です。
多くの口コミサイトやプラットフォームでは、投稿内容に問題がある場合、運営元に報告して削除を求めることが可能です。
ただし、削除が認められるかどうかは、投稿内容が明らかに違法・虚偽・悪質といえるかどうかが重要な判断基準となります。
Googleマップや食べログなどの多くの口コミサイトには、投稿内容を通報できる機能があります。
該当の口コミを見つけたら、✅虚偽の内容が含まれている,✅営業妨害にあたるなどの理由を明記して、まずはサイト運営者に削除を申請しましょう。
この段階では、事業者自身でも対応可能ですが、削除が認められるかは内容の違法性や悪質性の程度によります。
運営側が削除に応じてくれない場合、裁判所へ仮処分を申し立てて削除命令を出してもらう方法があります。
この手続きでは、投稿内容が名誉毀損や業務妨害にあたることを証明し、削除の必要性と緊急性を主張します。
通常は弁護士に依頼して進めることになりますが、売上減少や風評被害など、実害が出ている場合は削除が認められる可能性が高まります。
悪質な口コミが競合他社や元従業員などの嫌がらせである可能性がある場合は、削除だけでなく「誰が書いたのか」を突き止めることも重要です。
この場合は次に説明する発信者情報開示請求によって、投稿者の情報を特定することができます。
投稿者を特定するには?ー発信者情報開示請求についてー

悪質な口コミが明らかに営業妨害や名誉毀損にあたる場合、「誰が書いたのか」を特定することも可能です。これを行うのが発信者情報開示請求という法的手続きです。
この手続きは大きく2段階に分かれます。まず、口コミが掲載されたサイト運営者に対して、投稿時に使われたIPアドレスなどの通信記録を開示してもらうよう請求します。
しかし、多くの場合は任意での開示には応じてもらえず、裁判所に対して仮処分や訴訟を通じて命令を出してもらう必要があります。
IPアドレスが判明したら、次はそのIPを使っていたプロバイダ(通信会社)に対し、契約者の氏名・住所などの個人情報の開示を求めます。
こちらも裁判手続きが必要です。
なお、口コミの投稿から時間が経つと通信記録(ログ)が消えてしまうため、早期の対応が極めて重要です。投稿から半年以上経過していると、情報が残っていないことも珍しくありません。
こうして投稿者が特定できれば、損害賠償請求や謝罪要求、再発防止措置をとることも可能です。
競合他社や元従業員が悪意を持って投稿していた例も多く、投稿者特定は実務的にも有効な手段といえるでしょう。
違法と認められやすい悪質口コミの特徴

口コミの中でも、これは明らかに違法と判断されやすいものには、いくつかの共通点があります。
以下のような投稿は名誉毀損や営業妨害として認定されやすい傾向があります。
内容が明らかに虚偽である
「この店で食中毒になった」「詐欺まがいの商売をしている」など、根拠のない事実を断定的に書いている場合は、名誉毀損が成立する可能性が高くなります。
実際に、飲食店について「異物が入っていた」などと虚偽の投稿をしたケースでは、損害賠償請求が認められた例もあります。
実際に利用していない人物による投稿
口コミ投稿者がその店舗やサービスを一度も利用していない場合、投稿内容の信頼性が大きく揺らぎます。
特に、競合他社や元従業員が嫌がらせ目的で書いたことが判明した場合、業務妨害として厳しく扱われます。
同一人物による執拗な書き込みや拡散
ひとりの人物が複数のアカウントを使ってネガティブなレビューを大量に投稿したり、SNS等で繰り返し拡散している場合は、悪意性や継続性が重視され、違法性が強く認定される傾向にあります。
これは単なる意見の表明を超えて、攻撃目的の投稿=業務妨害とみなされるからです。
具体的な営業損害が出ている
口コミが原因でキャンセルが相次いだ、売上が落ちた、といった実害の証拠がある場合は、裁判所も重く受け止めます。
「どれだけ影響があったか」を証明できると、削除や損害賠償請求が通りやすくなります。

こうした要素が複数重なっている場合は、法的対応によって投稿削除・投稿者特定が認められる可能性が高くなります。
反対に、「接客が少し冷たかった」などの主観的意見だけでは、違法とは判断されにくい点に注意が必要です。
事業者が自衛のためにできること


悪質な口コミ被害にあったとき、あわてて反論コメントを書いたり、相手に直接連絡を取るのは逆効果になる場合もあります。
まずは冷静に、以下のステップで対応を進めましょう。
投稿内容の証拠を保全する
削除依頼や法的手続きを行ううえで、投稿内容の記録をきちんと残しておくことが非常に重要です。
口コミのスクリーンショットだけでなく、投稿日時・URL・掲載媒体なども一緒に保存しておきましょう。
ウェブ魚拓などを活用しページ全体を保存しておくこともおすすめです。
感情的な反論は控える
相手が悪質であったとしても、口コミ欄で感情的に反論すると、第三者に“揉めている店”という印象を広めてしまい逆効果になりかねません。
また、誤って個人情報を晒してしまったり、名誉毀損で“反撃”してしまうと、事業者側が法的責任を問われる可能性もあります。
被害の拡大防止と並行して法的な相談を
口コミによる営業への影響が懸念される場合は、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
投稿者の特定・削除請求・損害賠償など、法的手続きにはタイミングと証拠の揃え方が関わってきます。
法的対処をとるべきか・このまま放っておくべきかも含めて、専門家の判断を仰いだうえで最適な対応方針を立てることが、結果的にコスト・時間の両面で負担を減らすことにつながります。
リスクマネジメントとして、社内ルールや対応体制の整備も重要
悪質口コミを未然に防ぐことは難しいですが、社員教育や退職者対応の見直しなど、リスクを減らすための社内体制構築も並行して進めましょう。
また、顧客対応の改善や、誠実なレビュー促進策もブランドイメージ向上につながります。
まとめ:風評リスクには“早期対応”と“記録の確保”を


悪質な口コミは、放置すると売上減少や信用失墜といった経済的ダメージを招くだけでなく、長期的なブランドイメージの毀損にもつながります。
しかし、ただ「不満を書かれた」と嘆くのではなく、法的に対処できるケースは確実に存在するのです。
事業者としての最善策は、「泣き寝入りしない」こと、そして「冷静に迅速に対応する」ことです。
法的手段を正しく使いこなし、被害を最小限に抑え、再発防止に取り組むことこそが、悪質口コミの風評リスクに負けないための真の防御策と言えるでしょう。