知的財産コラムー意匠権とはー
意匠権とは?
「意匠」とは、物品(部品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合で、視覚を通じて美感を生じさせるものと規定されています。
機能が同じであれば、デザインの善し悪しで購入を決める場合もあります。そこで、デザインを保護するために意匠権という権利があるのです。例えば、携帯電話やソファ、椅子等の形状が意匠権の対象となり得ます。
意匠登録を受けるための要件
意匠登録を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
客観的要件
- 意匠法上の意匠にあたること
-
①物品であること
花火、アイコン、噴水などは物品ではありませんので、意匠登録を受けることが出来ません。
②視覚性・美感性があること
携帯電話内部の機械構造は、外から見えませんので、意匠登録を受けることが出来ません。
- 工業上利用
-
大量生産が可能であることが必要です。従って、レオナルドダビンチの「モナリザ」や観賞植物などは、意匠登録を受けることが出来ません。
- 物品自体の形態
-
インテリアデザインなどは、意匠登録を受けることが出来ません。
- 新しいこと
-
日本、外国の雑誌にすでに掲載しているものと、同一、類似のものは意匠登録を受けることが出来ません。また、インターネットで公開されたものと、同一、類似のものも意匠登録を受けることが出来ません。
- 容易に考えだすことができないこと
-
その業界の平均デザイナーが容易にできる場合には、意匠登録を受けることが出来ません。
- 不登録事由に該当しないこと
-
わいせつ物を表した意匠、物品の機能確保に不可欠な形状のみからなる意匠は、意匠登録を受けることが出来ません。
- 先願意匠の一部と同一または類似の意匠でないこと
-
従前は、部分意匠と全体意匠とは、先願主義が適用されず、共に、登録することが出来ました。
しかし、後で出されたものが、先願の全体意匠に含まれていることや、権利期間を延長する結果を招く可能性があるという理由から、見直され、現在では、意匠登録を受けることが出来ません。
これは、あくまで、先願が全体意匠で、後願が部分意匠の場合に適用されます。
同一の出願人の場合には、先願の公報発行前に限り、後願の部分意匠出願をすることが出来ることになっています。
形式的要件
- 先願であること(9条)
-
同一の出願人でも、類似の後願は排除されます(これを回避するために、関連意匠制度があります)。
- 一意匠一出願の原則
-
経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとに出願しなくてはなりません。
例えば、 陶器で出来た花瓶の斬新な形状を考えたため、陶器という物品を指定して、意匠登録出願しても、陶器という物品は、省令にはありませんので、意匠登録できません。省令では、花瓶といったレベルまで具体的に指定すべきことを規定しています。
意匠権の効力
独占的排他的権利
登録意匠及びこれに類似する意匠を実施をする権利を専有します。類似部分にまで独占的排他的権利が及ぶことが、商標権と異なります。
意匠権の効力の制限
①実施権を設定した場合
②利用・抵触関係にある場合
利用・・・他人の登録意匠を取り込んだ部分とその他の部分とが結合して、全体としては、その他人の意匠と非類似
の場合。例)先願がハンドルで、後願が自転車のような場合
抵触・・・同じ物品に、既に他人が特許権を得ているような場合
利用抵触関係にある場合には、使用に先立ち、実施権を設定してもらう必要があります。
特殊な意匠
- 秘密意匠
-
意匠権の設定登録から一定期間(3年以内)、意匠内容を秘密にする制度です。3年以内の範囲で、延長、短縮が出来ます。
出願と同時、又は意匠登録の第1年分の登録料の納付と同時に請求しなくてはなりません。
将来の流行に備えて意匠をストックしておく必要がある場合など(販売が将来のような場合)、この制度を利用することが考えられます。
- 部分意匠
-
物品全体から物理的に切り離せない部分について、意匠登録を受けることが出来る制度です。
意匠登録を受けようとする部分については、具体的に創造したが、その他の部分については、まだ具体化に創作出来ていない場合、あるいは部分的に特徴があり、物品全体として出願するとその特徴部分の特徴が埋没してしまうような場合に利用することが考えられます。
- 組物の意匠
-
一物品一意匠一出願の原則の例外として二つ以上の物品が、全体として一つの美感を起こさせるような場合に、この制度を利用して意匠登録を受けることが出来ます。
- 関連意匠
-
一つのデザイン・コンセプトから多くのバリエーション意匠が創作されるような場合、それらをまとめて出願することができます。
ただし、この制度を利用する場合、本意匠の公報発行の前日までに出願しなくてはなりません。
- 動的意匠
-
例えば、動物の形状をした玩具では、四本足で立っている場合と後二本足で立っている場合とは意匠が異なります。そこで、四本足の形状について意匠登録を受けていても、二本足の形状について他人に意匠登録される可能性があります。
動的意匠では、これらをまとめて、一出願で保護することが出来ます。