社内ハラスメント相談窓口が機能していない会社の末路とは?企業が負うリスクと対策

監修者:弁護士 渡辺秀行 法律事務所リベロ(東京都足立区)所長弁護士

監修者:弁護士 渡辺秀行

 法律事務所リベロ(東京都足立区)
 所長弁護士

“ハラスメント相談窓口はちゃんと設置してるから大丈夫!”そう思って安心している会社、実は少なくありません。
しかしその窓口、社員が安心して相談できる“仕組み”になっていますか?

たとえば――
「担当者が誰か分からない」
「相談しても放置されそう」
「そもそも窓口が機能している雰囲気がない」

こんな状態では、形だけの“名ばかり窓口”になっている可能性大です。
そして今、そんな状態を放置していた企業が、重大なトラブルに発展するケースが増えてきています。

社内でハラスメントが起きたとき、相談窓口がまともに機能していなければ、
被害者が外部機関に通報したり、SNSなどで告発されたりするリスクも出てきます。
つまり「形だけの対応」が、会社の信用を大きく揺るがす原因になる時代なのです。

この記事では、相談窓口が機能していないことによって実際に起きたトラブルや、
企業が負うリスク、そして“ちゃんと使われる窓口”にするためのポイントを分かりやすく解説していきます。

目次

機能していない相談窓口の危険性

相談窓口を“設けた”この時点で満足してしまっていませんか?
実はそれ、法令上は「アウト」になる可能性があります。

パワハラ対策、企業に求められる対応

2022年から、中小企業にも「パワハラ防止措置」が義務化されました。
これはハラスメントの相談体制を整え、被害が出たら迅速に対応せよ,という法律のルールです。
つまり、設置しただけで何もしていない状態では、法律違反になるリスクもあるのです。

社員が声を上げられない=不満が蓄積している

誰もハラスメント相談にこないからうちは働きやすい職場だ,と上層部は考えることでしょう。
しかし従業員達は相談してもムダだと思っているかもしれません。
ハラスメント相談窓口が形だけになってしまうと,従業員は内部よりも外部の第三者(労基署・弁護士・SNS)などに助けを求めるようになります。
その結果,突然の通報やネットでの告発・炎上等につながってしまうケースもあります。

企業のリスクは損害賠償だけではない

ハラスメント相談窓口が機能していないことで起こりうるリスクは以下の通りです。

  • 労働基準監督署からの是正勧告
  • ハラスメント加害者を野放ししたことによる企業への損害賠償請求
  • ネット上での炎上や風評被害
  • 優秀な人材の流出・採用難

当社は問題がない!と思っていた会社こそ、ある日突然トラブルに巻き込まれてしまうのです。

相談窓口が機能しなかったことで起こりうるトラブル

ここからは、相談窓口が機能しないことで想定されるトラブルの例を挙げていきます。

労基署から是正勧告を受けてしまう例

ある企業では、社員が上司のパワハラを相談窓口に訴えました。
ところが対応は「様子を見ましょう」と先延ばしされ相談は記録されず、担当者も何も動かないまま時間が過ぎていきました。
この対応にしびれを切らした社員は労働基準監督署に通報し、会社は是正勧告を受けることに。
さらに会社名が内部通報サイトで公開され、取引先との関係がギクシャクし、企業の信頼に大きなダメージが出ることになりました。

社員からハラスメントの相談があったにも関わらず、会社が放置していたり不適切な対応(無視・加害者寄りの姿勢など)をしていた場合は、労基署の調査が入り、パワハラ防止措置義務」に違反しているとして是正勧告を受ける可能性があります。

被害社員から損害賠償請求される例

パワハラの相談を受けたにもかかわらず、企業側が証拠が不十分とみなし何の対応もしませんでした。
その結果、ハラスメントは続き、被害を受けた社員は心身に不調をきたして休職することになりました。
そして社員は会社が相談を受けたにもかかわらず、適切な調査や対応を怠ったことで精神的苦痛を受けたとして、企業に対し損害賠償請求裁判を提起しました。
裁判では、会社の対応が安全配慮義務違反にあたると判断され、慰謝料の支払いを命じられる結果となりました。

労働契約法第5条には、企業には「労働者が安全に働ける環境を確保する義務(安全配慮義務)」があるとされています。
ハラスメントの相談を放置し、社員が健康被害を受けた場合企業はこの義務に違反したとして、損害賠償責任を問われることになります。

この2つのケースの共通点は,相談を受ける仕組みはあったにもかかわらず,機能していなかったことで事態を悪化させてしまったという点です。
形だけの対応ではリスクは防げないのです。

“ちゃんと機能する相談窓口”にするために必要なこと

形だけの窓口では意味がないということはお分かりいただけたと思います。
では、社員が安心して利用できる、実際に“機能する相談窓口”にするためには、何が必要なのでしょうか?

誰でも相談しやすい体制と雰囲気づくり

  • 窓口の存在を社内にしっかり周知させる(張り紙の掲示・イントラ掲載・研修を行う等)
  • 担当者の顔ぶれや連絡方法を明確にしておく
  • 複数の相談ルート(メール、電話、第三者機関など)を用意しておく

👉「相談しても大丈夫そう」と思える安心感・信頼感が大切です。

また,社内だけでは相談しづらいケースもあると思います。そういった場合に備えて、弁護士や社労士など外部の専門機関と連携するのも有効な方法です。
社員にとって逃げ場があることが心理的な安心感につながります

担当者に適切な知識と意識を持たせる

  • ハラスメントの基礎知識や対応の流れをきちんと研修する。
  • 相談者の気持ちに配慮できる姿勢や傾聴スキルを磨く。
  • 不適切な対応(例:「それくらい我慢して」など)を防ぐ教育を行う。

👉 担当者の対応ひとつで、会社全体の印象が決まります。相談担当は適切な人物を選出し,効果的な研修を受けるようにしましょう。

相談はすぐに対応し、記録・再発防止まで行う

ハラスメントに関する相談が入った際には,速やかに対応し調査をおこないましょう。
証拠がないからといって門前払いすることは絶対に行ってはなりません。
該当社員やその同僚たちへの聞き取り調査を行いましょう。
そして,その結果や今後の対応については当事者へきちんと説明しましょう。
合わせて再発防止のための措置(配置転換や注意喚起)も行いましょう。
相談を放置すると,被害が拡大するほか相談者の不満も大きくなり,会社の責任が重くなってしまいます。

信頼される職場づくりをめざして

「うちは相談窓口ありますよ」そう言えることは第一歩。しかし、本当に大事なのは“相談されたあと、どう動けるか”ということです。

形だけの相談窓口では、社員の声は届かず、その沈黙がやがて会社にとって大きなリスクとなって返ってきます。
逆に、社員が安心して相談できる環境が整っていれば、トラブルの早期発見・対応ができ、結果として企業の信頼や人材定着にもつながります

法律上の義務であることはもちろん、これからの時代は人を大切にする企業が選ばれていきます。「なんとなく作った窓口」がある企業は、いま一度、その体制を見直してみるタイミングかもしれません。

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法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行(東京弁護士会)

特許事務所にて 特許出願、中間処理等に従事したのち、平成17年旧司法試験合格。
平成19年広島弁護士会に登録し、山下江法律事務所に入所。
平成23年地元北千住にて独立、法律事務所リベロを設立。


弁護士として約17年、離婚、相続、債務整理、交通事故、労働問題、不動産、刑事事件、消費者事件、知的財産、企業法務等、多岐に渡って相談をお受けしております。事件に対する、粘り強く、あきらめない姿勢が強みです。極真空手歴約20年。
法律事務所リベロは北千住徒歩7分の地域密着型法律事務所です。堅苦しくなく、依頼者の方が安心して相談出来る事務所です。お気軽にご相談ください。

法律事務所リベロ

所長 弁護士 渡辺秀行

  • 東京弁護士会所属
  • 慶応大学出身
  • 平成17年旧司法試験合格

弁護士として約17年、離婚、相続、債務整理、交通事故、労働問題、不動産、刑事事件、消費者事件、知的財産、企業法務等、多岐に渡って相談をお受けしております。事件に対する、粘り強く、あきらめない姿勢が強みです。極真空手歴約20年。
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