遺言書の重要性 -相続で揉めないために-
相続は相続する側、相続される側にもお悩みがつきまといます。
それぞれ、よく以下の内容で悩んでいる方が多いように思われます。
「子供たちの仲が悪くて、このままだとトラブルになりそう」
「法定相続とは違う形で、財産を譲りたい」
「親が自分が望むような形で相続させてくれるのか?」
「兄弟が親の財産を自分のものにしているのでは?」
「うちに限って相続でもめるなんてありえない」「たいした財産もないのに遺言なんて・・・」とお考えになるかもしれません。
ところが実際に相続が発生し、財産が絡んでくると、兄弟が豹変したり、知らない人が名乗り出てきたりもします。
また、相続の問題は非常に根が深く、法律だけでは解決できない感情の問題が多く含まれています。一度、こじれてしまうと収拾がつかなくなってしまいます。
そのようにならないためには、「遺言を残す」、もしくは「遺言を残してもらう」 ことが非常に重要です。
遺言書がないまま、相続になれば、なかなか思い通りにはなりません。
しかし、「そうか、遺言書を書いておこう」とか、「よし、親に遺言書を書いてもらおう」と思っても、法律的に有効な書き方をするのは1人ではかなり困難ですし、書いてもらう場合には、どのように話を持って行けば良いのか、という問題があります。
このような場合は、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。
公正証書遺言を薦める理由
遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類があります。
自筆証書遺言
本人が、本文の全文・日付・氏名を自筆で書いた書面に捺印したものです。
活字や代筆は認められず、必ず自筆で書くことが必要となります。
一見、最も簡単ですし、費用もかかりませんので手っ取り早いように思われるかも知れませんが、一般の方が自筆証書遺言を書くと内容が不明確だったり、法律上無効となる恐れもあります。
また、あまり知られていないことですが、本人の死後、遺言の存在を知りながら、相続人が隠したり、無視したりして、日の目を見ないリスクもあります。
公正証書遺言
公証人役場で遺言を作成する方法です(病床にあるような場合、公証人に出張を求めることもできます)。
2人以上の立会いを得て、本人が公証人に遺言の内容を話し、公証人がこれを筆記して、本人及び、証人に読み聞かせ、本人及び証人が筆記の正確なことを確認した後、各自署名押印し、公証人が方式に従って作成された旨を付記して署名押印して作成します。
公正証書遺言は公証役場にその原本が保管されていることから、その存在が一番確実なものであり、家庭裁判所における検認手続も不要です。
秘密証書遺言
公正証書遺言と同じように公証役場で作成するのですが、遺言書の内容を密封して、公証人も内容を確認できないところが相違点です。
秘密証書遺言は内容を秘密にでき、また遺言書の存在は公証人や証人が知るところとなりますので一見確実そうですが、遺言書の内容自体については公証人が確認していませんので、不明確な内容だったり、法律上無効となる恐れもあります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、作成時点でその内容を本人以外に知られることがなく、プライバシーを守ることができますが、本人の死後に家庭裁判所で検認の手続きが必要となります。
検認の必要がないのは、公正証書遺言の場合だけです。
以上3つの遺言の種類をご紹介いたしました。
法律的に有効な遺言を作成し、確実な処理を望む場合は公正証書遺言をお薦め致します。
公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言を作成するには、原則として本人が公証人役場に出向いて作成することが必要です。
ただし、一般の方がいきなり公証人役場に出向いて遺言を作成しようとしても、なかなか難しい面があります。
ですから、まずは専門家である弁護士にご相談の上、公正証書遺言を作成されることをお勧めいたします。
弁護士がご相談を受けた場合、相続人の状況、財産の状況等をお伺いし、どのような遺言書を作成するかのが良いかをアドバイスさせていただき、弁護士が遺言書の案文を作成します。
以下に公正証書遺言作成のポイントを列挙します。
相続人調査を行う
遺言を書くに際して、相続人調査を行っていないケースがよくあります。
「相続人なんか分かっている」と思われるかも知れませんが、想定外の相続人が出てくるケースが意外と多いのです。
相続人の範囲を明らかにするために、遺言者が生まれてからその作成時点までのすべての戸籍謄本を取得します。
また、推定相続人全員の戸籍謄本も取得し、相続関係図を作成します。
相続関係図を作成することで、まず、法定相続の場合のシュミレーションを行うことができます。
相続財産調査を行う
相続人調査と並んで、相続財産調査を行います。
財産のうち最も大事なものは、多くの場合に不動産ですので、土地・建物の登記簿謄本を取得します。
さらに、預貯金、株式、債権、負債等、すべてをリストアップします。
法律に配慮して、遺産分割の方法を記載する
遺言書に書きさえすれば、どんな分け方でも出来るということではありません。
配偶者や子供などは遺留分という侵すことのできない権利を有しています。
従って、遺言書を作成する場合、遺留分を侵害するかどうかの考慮が必要です。
遺言執行者を指定する
遺言書は作成するだけでなく、それが確実に執行されることが極めて重要です。
従って、信頼できる者を遺言執行者に指定しておくことが重要です。
遺言執行者に指定された者は、相続財産の管理のほか、子供の認知など、遺言執行に必要な一切の行為を行うことになります。
遺言執行者の選任
遺言執行者とは、被相続人が遺言を残していた場合に、遺言の内容を実現する者のことです。
遺言執行者は、遺言で指定されることになっていますが、遺言で指定されていない場合には、家庭裁判所に申し立てて、遺言執行者を選任してもらうことができます。
遺言執行者に指定された人は、相続財産の管理のほか、子供の認知や相続人の廃除など、遺言執行に必要な一切の行為を行うことになります。