遺留分について知っておきたい基礎知識とポイント
遺留分とは
被相続人(亡くなった方)は、原則、自由意志にもとづいて遺言することができるのですが、全財産を愛人に譲るとか、ある一人の子供のみ譲る、という遺言をすると、その他残された家族は生活に困ってしまうことがあります。
そこで、法律は最低限度の相続財産を遺族に保証しています。これが遺留分です。
遺留分というものは、当然に貰えるものではなく、請求をしなければなりません。
この請求のことを遺留分侵害額請求と言います(民法が改正される前は,遺留分減殺請求と呼ばれていました)。
遺留分は、被相続人の子供(およびその代襲相続人)や配偶者、直系尊属にはありますが、兄弟姉妹にはありません。
したがって,子や親のいない夫婦の場合,一方の配偶者に対して自己の財産を「相続させる」旨の遺言を互いに残しておくことなどが考えられます。一方の配偶者の配偶者を任意後見受任者として任意後見契約と遺言公正証書を作って,老後に備えるちう夫婦の在り方もあります。
ここで,遺留分権利者全体に留保されるべき遺留分(総体的遺留分)は,直系尊属のみが相続人の場合には,遺留分権利者全体に残されるべき相続財産の価格の3分の1,それ以外の場合(直系卑属のみの場合,直系卑属と配偶者の場合,直系尊属と配偶者の場合,配偶者のみの場合)は2分の1になります。
また,複数の相続人がいる場合,各相続人のそれぞれの遺留分(個別的遺留分)は,総体的遺留分に各自の法定相続分の割合を乗じた額となります。
相続で遺留分が問題になる場合は,「揉め事」になることが多いです。下記の内容をよくお読み頂き,十分にご理解ください。
また,個別の遺留分の問題については,専門家である弁護士にご相談ください。
遺留分を請求するには
遺留分の請求は、相続開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内にしなければなりません。
贈与などを受けて遺留分を侵害している相手方に請求をします。
また、遺留分侵害額請求権は、相続開始より10年で消滅します。
なお,遺留分侵害額請求権を行使することによって発生する金銭債権は意思表示をしたときから5年で消滅時効によって消滅してしまうので,注意が必要です。
遺留分侵害額請求の注意点
遺留分侵害額請求をする場合は,内容証明で請求されることをお勧めします。遺産の詳細が分からない段階で請求せざるを得ないこともあるため,金額を明示する必要はありません(ただし,遅延損害金を請求する場合には金額の明示が必要です)。
内容証明できちんと証拠にしておかなければ,後に,遺留分侵害額請求をしたのかどうかで争うことになりかねません。例えば,遺産分割の調停を申し立てただけでは,遺留分侵害額請求をしたが明らかではありません。
また,遺留分侵害額請求をする場合には,揉める事が多く,ある意味では揉める事を覚悟しておく必要があるかも知れません。
その意味からも,遺留分侵害額請求をする際は,弁護士に相談した上で行うのが良いと思います。
遺留分を侵害額請求されたら
あなたが被相続人の財産を相続したとして,相続人から遺留分を請求されたらどうすれば良いのでしょう。
あなたが,遺贈等を受けた結果として,他の相続人の遺留分が侵害された場合,その分を金銭で支払わなくてはなりません。
遺留分は相続人に認められた正当な権利ですので,請求されたら拒めません。ただし,金銭が手元になく,すぐに支払えない場合,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払いについて相当の期限の付与を請求することが出来ます。
あなたが相続人で,被相続人と相談して遺言を作成する場合,遺留分を侵害する内容の遺言は,遺留分侵害額請求を受ける可能性があることをしっかりと覚えておきましょう。
できれば遺留分を侵害する遺言は避け,どうしても遺留分を侵害する内容の遺言をする場合は,遺留分を巡る紛争への対策を考えておく必要があります。
遺留分侵害額請求されないために
相続人から遺留分侵害額請求されないためには,以下のようなの方法が考えられます。
1.遺言書において,最初から遺留分を織り込んだ相続分の指定をする
具体的には,「私の遺産については,妻に1/2を,(現在の妻との)子に3/8を,前妻との子には1/8を相続させる」などのように遺言をすることです。
こうすることで,遺留分侵害額請求をされないで済みます。
結果的に,相続財産の一部を渡すことにはなりますが,こうした遺言を残すことが,争いを生じさせない方法と言えるでしょう。
2.遺言書の中に「遺留分の主張などはしないでほしい」と書く
このように書くことで,「それが被相続人本人の強い意志であれば,仕方ない」と思われる等,精神的な効果を与えることができるケースもあります。
しかし,この方法の欠点は,遺言書に「遺留分の主張などはしないでほしい」と書いたとしても,それは何ら法的効力を有するものではないということです。
したがって,このように遺言書に書いてあったとしても,相続人はその遺言に拘束されず,遺留分侵害額請求ができるのです。
3.遺留分の事前放棄をしてもらう
遺留分の権利者は,被相続人の生前,裁判所の許可を得て,遺留分を放棄することが出来ます。相当な財産の生前贈与が行われていたり,遺産紛争を避けるなど合理的な理由がある場合等に,事前放棄が認められます。許可事例としては,死後の遺産紛争を懸念して,婚外子に財産を贈与して遺留分を放棄させたという件があります。