取引先が代金を支払わない・・・効果的な債権回収の方法とは!
- 取引先が代金を支払ってくれない。
- 売掛金が数ヶ月にわたって回収できない。
- 取引先が倒産の危機にあり,1円も回収できないかもしれない
こうした事態は会社を経営していれば,度々出くわすかと思います。
電話や直接面談して催促しても支払われない場合、途方にくれるか、或いは強硬な手段に出ようと考えることもあるでしょう。
しかし、一歩間違えると、脅迫や恐喝などと言われ、逆に相手方から損害賠償請求を受けることもあります。
では,どのようにして売掛金や債権を回収していけばよいのでしょうか?
債権回収の6つの方法
債権回収を弁護士に依頼した場合,以下のような方法で売掛金・債権の回収を図ります。
弁護士が取引先に電話・面談で催促する。
債権や売掛金が回収出来ない場合、多くの会社では、弁護士に相談する前に、電話や面談等で催告を行うかと思います。
催告をしても誠意ある対応をしてこなかった取引先が、弁護士が介入し電話や面談で交渉すると、態度を変えることがあります。
つまり、弁護士に依頼したことにより、取引先にこちらの本気度が伝わり、「支払わざるを得ない」と思われる可能性が高くなります。
内容証明郵便で催促・督促する
弁護士が弁護士名で内容証明郵便を送付した場合、取引先は「このまま支払わないでいると裁判を起こされるかもしれない」と考え、支払いに応じる可能性が高くなります。
民事調停手続をする
調停は、裁判所を利用する手続ですが、弁護士を立てずに、自ら調停の申立を行うことも可能です。
しかし、調停はあくまで話し合いですから、相手方がそもそも裁判所に出頭しなければ成立しません。
また、狡猾な相手になると、不当な引き延ばしを行うこともあり、さほど実効性がない恐れがあります。
これに対して、弁護士に依頼して調停を申し立てた場合には、相手には、裁判所へ出頭しなければならないという気持ちや、このまま調停が成立しなければ次は訴訟になるのではないか・・・という気持ちが芽生えやすいと言えます。
保全処分の利用(仮差押えと仮処分)
保全処分とは、債務者の財産処分を事前に防止して保全しておく手続きです。
裁判で勝っても、そのときにすでに債務者の財産が散逸していては勝訴判決は無に帰すことになるので、その前に債務者の財産の散逸を防ぐために利用される制度です。
従って本来は、債権回収の手段ではありません。
しかし、保全処分を行うと、債務者に心理的圧力を与えて(例えば、銀行預金への仮差押は、債務者の銀行取引を一旦停止させることになります)、債務者の弁済を促す効果があります。
保全処分には、仮差押と仮処分があります。
仮差押は、金銭債権の執行を保全するものであり、典型的なものは、債務者の銀行預金への仮差押、債務者所有不動産への仮差押です。売掛債権への仮差押もあります。
仮処分は、金銭債権以外の債権(例えば、物の引渡請求権)の執行を保全するものです。
訴訟を提起する
訴訟手続は、債権・売掛金を回収する方法としては一番の正攻法です。
訴訟手続については、時間がかかるというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は第1回目の裁判期日終了後直ちに判決が出るケースが非常に多いのです。
また、相手方が裁判期日に出頭した場合でも、事実関係を争うことなく「一括では支払えないので、分割払いにして欲しい。」等と和解の申し入れをしてくるケースも多くあります。
なお、訴訟手続により判決を貰ったとしても、取引先が判決に従わず、代金を支払ってくれないことも考えられますが、強制執行手続の前提として先に判決を取得しておくことには大きな意味があります。
相手方の住所が判明しない場合でも、公示送達により、判決を貰うことが可能です。
強制執行手続
確定判決、和解調書、調停調書などは「債務名義」と呼ばれ、相手方が任意の支払に応じない場合、裁判所に強制執行を求めることができます。
強制執行には大きく分けて
- 不動産執行
- 動産執行
- 債権執行
の3種類があります。
但し不動産執行の場合、対象不動産に抵当権などの担保がついているときは要注意です。
対象不動産に担保力がないときは、強制執行は困難だからです。
債権執行の中心は銀行預金の差押えといえます。銀行預金を差押えれば、回収すべき金額の範囲内である限り、差押時の預金残高をそのまま回収することができます。
ただし、相手方がその銀行に対して借入金があるときは、先に、同銀行が預金と借入金を相殺してしまい、回収が不能となることもあります。
また、相手方が企業であれば、仮にその口座にほとんど預金がなかったとしても、銀行は差押えがあるとその企業との取引を停止しますので、営業に重大な支障が生じるため、任意に代金を支払わせることができる場合があります。
また、相手方が債権を有している相手方の取引先等が判明している場合には、相手方の有する当該債権を差押えることもできます。
相手方は、自らの取引先からの信用を失いたくないとの理由から、差押後に任意に支払ってくる可能性もあります。
このように、強制執行手続は債権回収における最後の手段として非常に有効です。
取引先が破綻した場合の回収方法
取引先が破綻してしまった場合債権の回収は非常に困難です。
特に、不動産担保を有していない企業にとっては、その後の破産手続等において配当金を受領できるだけで、債権のうちの大半は回収不能として諦めるしかないケースも多いかと思います。しかしながら、「諦めるのは早い」ケースもあります。
相殺により回収する
取引先が破産しても債権回収が図れるケースの代表例として「相殺」が挙げられます。
法定の事項について説明が必要になります。
取引先が破綻してしまった場合でも、取引先に対して債権と債務の両方が存する場合には、両者を相殺することにより、取引先に対する債権を回収したのと同様の効果を得ることができます。
もっとも、相殺の意思表示を、誰に対して、どのように行うべきか、頭を悩まされるところと思います。
弁護士を利用すれば、破産手続等の法的整理手続に応じて意思表示の相手方を選択し、内容証明郵便を利用する等、より確実な方法で、相殺の意思表示を行うことができます。
担保権を実行する
破産手続開始決定があっても、債権者の担保権は制限されることなく行使することができるのが原則です。
所有権留保
所有権留保で商品を取引先に売買し、取引先が倒産した場合、売買契約を解除し、取引先の了解をとった上で商品を引き上げます。
取引先の了解をとらないと、窃盗罪などに問われるおそれがあるため、書面で了解をとります。了解をとる場合、代表者か取引先の弁護士とすべきです。
取引先がその商品を既に第三者に転売している場合、その第三者が商品の所有権を即時取得していることが考えられること、及び、取引先との売買契約の中で第三者に転売されたときは所有権留保が解除されると定められている場合がありますので、その場合は所有権留保の方法によることは難しくなります。
先取特権
これは、債務者の財産から優先弁済を受けることのできる法定担保物権です。
例えば、商品を売却したが、売掛債権の回収がまだのときに、売掛先が倒産した場合に、売り掛先会社にある自社商品については、動産の先取特権の行使が可能です。
抵当権
裁判所に対し、競売の申立てを行います。
申立てに際しては、抵当権の設定登記に関する登記簿謄本等を用意する必要があります。
申立ては、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に行います。
債権譲渡
例えば、取引先が別の会社に対して売掛金を持っている場合、取引先からその債権の譲渡を受け、あなたが譲り受けた債権を第三者(第三債務者)に対して行使することにより、債権の回収を図ることができます。
債権譲渡は原則として自由にできますが、債権譲渡を第三者に対抗するには、確定日付ある証書により、取引先から第三債務者に対して譲渡の事実を通知させる必要があります。
内容証明ならば確定日付がありますので、内容証明を用いて、取引先に譲渡の通知をさせましょう。
自社製品・他社製品を回収する
自社製品を回収する方法については、上の所有権留保や先取特権の実行方法で記載したとおりです。
他社の製品を取引先から譲り受けることにより、代物弁済として債権の回収を図ることができます。もっとも、この場合はもともと第三者の財産だったものですから、「自社の製品を回収する」場合よりも取引先の同意書を取っておく必要が高くなります。
この場合も同意書がない場合は窃盗罪に問われる恐れがあります。
さらに,この場合は取引先も容易に同意書を交付しないかもしれません。
一つ間違えると危険な方法ですので、実行する場合は弁護士にご相談下さい。
債権回収を弁護士に依頼するメリット
自社で回収困難な債権を回収しようとする場合、一歩間違えると、脅迫や恐喝などと言われ、逆に相手方から損害賠償請求を受けることもあります。弁護士は法的に適切な方法で、かつ効果的に回収する方法を心得ています。
交渉が有利になる
弁護士が代理人となって、債務者に内容証明郵便を送付するだけで、債務者が弁済に応じるケースも数多くあります。弁護士が代理人につくことで、請求に応じない場合はより強力な法的手段が講じられてしまう、との心理的プレッシャーが債務者に働くためです。
最適な法的手段がとれる
債権回収のためには様々な方法が考えられます。
全てのケースにおいて通用するベストの方法などなく、ケースごとに手段を模索することになります。
例えば、内容証明を相手方に送るだけでも、そのことが原因となって今後の取引が途絶えてしまうかもしれません。
弁護士に相談すれば、どの方法がもっとも適切なのかという判断が可能となり、適切な法的手続をとることが可能になります。
訴訟を提起し強制執行ができる
内容証明を送る、民事調停を申し立てるといった方法が奏功しない場合は、最終的には訴訟を提起することになります。
しかし、訴訟は高度の専門性が必要となります。
有利な証拠を収集し、整理した上で当方の主張を説得的に行うための書面を作成する、といったことは大変な手間がかかる作業であり、専門家に依頼する方が合理的・経済的です。
また、訴訟で勝訴した後は、強制執行手続をしなければならず、これもまた煩雑です。弁護士に依頼することで、訴訟・強制執行を適切に遂行し、債権回収を図ることができます。
弁護士と,司法書士・行政書士の違い
内容証明郵便の作成等、債権回収を司法書士や行政書士に依頼する方法もありますが、内容証明郵便を送付した後の相手方との交渉については、簡易裁判所における代理権を有しない司法書士及び全ての行政書士は、弁護士法72条に抵触するため、原則として行うことができません。
このため、せっかく送った筈の内容証明郵便も、いわば「送りっぱなし」になってしまう恐れがあります。
今後の交渉訴訟も含めて考えるならば、内容証明郵便の作成の段階から弁護士に依頼することをおすすめします。