
上司や同僚からの無視はサイレントモラハラになる?職場での冷遇の理由と正しい対処法

相手に怒りを感じているとき、「今は話したくない」と一時的に距離を置きたい時は誰しもあると思います。
また、怒りがおさまらずに相手を一時的に無視してしまうこともあるでしょう。
しかし、長期に渡る無視や、嫌がらせを目的とした頻繁な無視は「サイレントモラハラ」と呼ばれ、相手の存在を否定する「精神的DV」の一種です。
このコラムでは、意図的に無視する上司や同僚の心理や,無視がもたらす影響、無視された時の対処法について解説します。
長期間・頻繁な「無視」は立派な精神的DV(モラハラ)です

「無視」はなぜ精神的DV?
「無視」という行為は、一見些細なように思えるかもしれませんが、精神的DVの一種であり、モラルハラスメント(モラハラ)に分類されます。モラハラの特性として、言葉や行動で相手をコントロールする傾向が挙げられますが、無視のように意図的に相手を排除し、孤立させる行為もその一つです。
無視は、相手の存在そのものを否定し、価値を感じさせなくする行為です。これが積み重なることで被害者の自己肯定感が低下し、精神的ストレスや健康問題につながるのです。
「無視」は「サイレントモラハラ」の一つです
無視は、発言や態度による明らかな嫌がらせとは異なり、「サイレントモラハラ」として知られています。「サイレントモラハラ」の特徴は、対話を拒否し、相手を意図的に孤立状態にしてしまうことです。一見すると口論や暴力を避けたように見えるかもしれませんが、実際にはこれが非常に破壊的な精神的影響を及ぼします。
例えば、
- 相手からの話しかけに一切応じない
- 日常の連絡事項を伝えない
- わざと冷淡な態度をとる
- チームの飲み会に自分だけ呼ばれない
- 無言の圧により,常に緊迫感のある雰囲気を出されたり,休憩を取りづらくさせる
- “聞こえていないふり”など自分の発言だけ無視されてしまう。
といった行動が挙げられます。このような行為は直接的な言葉や暴力を伴わないため表面化しにくいですが、実質的には深刻な心理的ダメージを与えるモラハラ行為として広く認識されています。
なぜ「無視」をするの?

「無視」が心理的なダメージを与えると分かっているから
モラルハラスメント(モラハラ)の中でも「無視」という行為は、被害者の心理に深刻なダメージを与える特徴があります。無視されることにより、被害者は自分の意見や存在が無価値であると感じることが多く、孤立感が強まります。
この精神的孤立は、低い自己評価や不安感を助長し、場合によってはうつ病の引き金になることもあります。このように、無視は非常に攻撃力の高い方法だと加害者は分かっており、その上でわざと無視という方法を取ることで、相手にダメージを与えようとします。

相手を孤立させたいから
「無視」は単なる無関心や偶然の行動ではなく、多くの場合意図的な戦術として利用されることがあります。
この行為は被害者の「存在そのもの」に対する価値を攻撃する点が特徴です。たとえば、職場で特定の同僚を会話から意図的に排除したり、特定の部下に応答しないなど、被害者を孤立させることで彼らの精神的エネルギーを削ぎ落とします。このような態度の根底にはコントロール欲求や加害者自身の内なる不安が隠されています。
相手を支配したいから
「無視」を行う人の心理的背景には、自分の思い通りに物事を進めたいという強い支配欲が根底にあります。
社内における権力や主導権を握ることで自身の価値を感じたいと考えている場合が多いです。このような心理は、一見して自信があるように見えるものの、実際には自己肯定感の低さや内面的な不安を隠す手段として現れることがあります。
また、相手を無視し精神的に追い詰めることで、自分が優位に立っていると認識し、その位置を維持することで安心感を得ようとします。他者よりも優れていると誇示することで、内面的に抱える劣等感や不安を埋め合わせたいと感じています。
このような心理的要因が重なる結果、無視という形で相手をコントロールし、支配関係を構築しようとするのです。さらに、幼少期において家庭環境に問題があった場合や、心理的に未熟な部分を抱えているケースも少なくありません。
特に挙げられるのが自己中心的な性格と共感性の欠如です。自分の感情や欲求が最優先であり、相手の感情や意見を無視する場合が非常に多くみられます。
このような性格傾向を持つ人は他者との健全な関係を築くことが難しく、相手の痛みや苦しみに共感する能力が欠けていることから、結果として「無視」という行為を繰り返しやすくなります。

無視による深刻な影響とは?

被害者の心理的ダメージが大きい
無視は、モラハラの中でも特に心理的なダメージをもたらす行為です。被害者は相手から存在を否定されたように感じ、自尊心や自己肯定感が低下します。長期的に続く無視は、抑うつ状態や不安障害を引き起こし、最悪の場合、うつ病やパニック障害などにつながることがあります。
また、無視する人の心理を理解しようと過度に気を使うあまり、自分の感情が後回しになり、心理的負担が増大します。心の不調が生活全般に影響を与えることも少なくありません。
業務に支障が出てしまう
職場内での無視は、日々の業務にも支障が生じます。例えば、職場では上司や同僚との情報共有が重要となりますが,無視されてしまうと必要な情報が得られず業務連携を図ることができません。
その結果,他部署との連携がとれず企画が停滞してしまったり,業務の支持や変更点が伝わらず作業ミスやクライアントへ迷惑がかける事態が発生します。
また1人が無視される状況が続くと職場全体の雰囲気も悪くなり,全体としての生産性が下がってしまいます。
「次は自分が無視されるのではないか・・・」と萎縮し意見が言えなくなったり,無視されている人を“見て見ぬふり”することが横行し,職場の風通しが悪くなってしまいます。
無視は単なる人間関係の問題ではなく、 業務の遅延・心理的ダメージ・職場環境の悪化 につながるのです。
職場で無視する上司や同僚との関係で悩んだときの対処法

無視されても落ち着いて対応しよう
上司や同僚から無視される場合、まず冷静な対応を心がけることが重要です。
無視という行為は心理的な攻撃であり、相手に自分の影響力を示したいという支配欲が背景にあることが多いです。そのため、直接的な口論や感情的な反応は避け、自分の主張を落ち着いて伝えることがポイントです。
また、無視する人の心理を理解し、「嫌がらせ」に対する自己防衛として距離を取ることも有効です。必要に応じて、自分の気持ちを信頼できる友人や専門家に話して吐き出すことを検討しましょう。「仕返ししたい」と思ってしまう気持ちも分かりますが、モラハラ上司に対しては、仕返しはかえって逆効果になる場合もありますので注意しましょう。

「無視をやめること」を相手に期待しない
モラハラ問題において、無理に解決を目指さない方が良い場合もあります。
モラハラを行う人には自己中心的な性格や共感性の欠如が見られるケースが多く、「無視しないでほしい」と対話を試みても話が通じないことがあります。
そのため、無理に話し合いを続けることで、自分自身がさらに精神的に疲弊してしまう可能性があるのです。このような場合は、冷静に状況を見極め、無視されたことに反応せず、一旦距離を置いたり他の方法で自分を守ることを優先しましょう。
信頼できる第三者に相談しよう
モラハラをはじめとする職場のハラスメント被害から抜け出すためには、第三者に相談することが非常に重要です。家族や親しい友人だけでなく、ハラスメント相談窓口・労働組合に相談することで、ハラスメントの解決をサポートするほか,配置転換や上司の指導を行ってもらえる可能性があります。
また,上司や同僚からの著しいハラスメント行為に対し慰謝料請求や労働審判等法的手続きを視野に入れている場合には弁護士に相談することもお勧めです。
法的手続きを行う場合にはメモや録音など証拠が重要となりますので覚えておくとよいでしょう。
上司や同僚からのハラスメントが改善されない時は

ハラスメントはエスカレートするので注意
ハラスメント行為は放置するとエスカレートする危険性があります。例えば、最初は小さな「無視」や冷たい態度から始まったとしても、それが繰り返されることで徐々に暴言や行動の制約へと発展することが少なくありません。
モラハラは一度顕在化すると被害者の心身に多大な負担を与え、それが長期化することで適応障害が引き起こされるなど仕事のパフォーマンスが低下するケースもあります。このような状況を防ぐためには、早期の対処法を検討し、信頼できる第三者や専門家に相談することが重要です。
記録を残し状況を冷静に把握しよう
ハラスメントの被害を具体的に理解し対処するためには、記録を残すことが有効です。
無視された状況や上司・同僚の態度、言葉、行動を日付や詳細とともに記録することで、事実を冷静に把握することができます。この記録は、第三者へ相談を行う際の説明材料となるだけでなく、必要であれば法的な手続きを進める際にも重要な証拠として活用できる場合があります。また、自分自身の心の整理を行ううえでも記録をつけることは役立ちます。
環境を変える選択肢も考えよう
無視などのハラスメントが続く場合、状況によっては「転職」という選択肢が最善策となることがあります。
これは決して簡単な決断ではありませんが、人事に相談しても改善が見込めないあるいは精神的に限界という場合には,自分自身の心身の健康と安全を守るためにも転職を視野に入れることも必要であると考えます。
まとめ

「無視」は、ハラスメントの中でも特に心理的なダメージをもたらす行為です。無視は、相手の存在そのものを否定し、価値を感じさせなくする行為です。その結果、不安感や孤独感が増幅され、うつ状態や自己否定感といった深刻な精神的影響が生じる可能性があります。
職場のハラスメントにおける「無視」を受けている場合、加害者との適切な距離を取ることが重要です。無視する人の心理として、相手をコントロールしようとする意図や、自己中心的な価値観が関係していることが多いため、被害者自身が感情的に巻き込まれないようにする必要があります。