【相続】家事従事型寄与分について弁護士が解説します【Q&A付】

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家事従事型寄与分とは?

被相続人の事業に対して無報酬またはそれに近い状態で従事し,労務を提供して,相続財産の維持または増加に寄与した場合です。家業の農業,漁業,飲食店,商店,医師,税理士等の自営業に従事することによって寄与分が認められることがあります。

寄与分についてはこちらの記事で解説しています。

家事従事型寄与分が認められる要件

①被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を越える特別の寄与があったこと

配偶者の場合,夫婦間には,同居,協力,扶助義務があることから,寄与行為がその義務の範囲内に過ぎないと判断されることもありますが,漁業や商店を夫婦で協力して行っているような場合には,その義務の範囲を超える特別の寄与があったと判断される可能性はあります。

②無償又はそれに近い状態で事業に従事していたこと

相続人が被相続人から世間並みの給与を受けている場合には,寄与分を認めることは出来ないとされていますが,それと比較してかなり低い金額の給与しか受け取っていない場合には,その差額部分について寄与分が認められる可能性があります。

これについて,大阪高等裁判所平成2年9月19日決定は,以下のように判断しています。

「・・・被相続人の財産形成に相続人が寄与したことが遺産分割にあたって評価されるのは,寄与の程度が相当に高度な場合でなければならないから,被相続人の事業に関して労務を提供した場合,提供した労務にある程度見合った賃金や報酬等の対価が支払われたときは,寄与分と認めることはできないが,支払われた賃金や報酬等が提供した労務の対価として到底十分でないときは,報いられていない残余の部分については寄与分と認められる余地があると解される。」

大阪高等裁判所平成2年9月19日決定

③継続的に事業に従事していたこと

期間について明確な基準があるわけではないですが,3~4年程度は必要と考えられています。

④専従性

労務内容が片手間なものではなく,かなりの負担を要することが必要です。
ただし家業だけをやっていたという意味ではなく,他の業務に従事していながら,家業に従事していた場合も含みます。

⑤寄与行為の結果として被相続人の財産を維持又は増加させていること

寄与分の計算方法

寄与相続人が通常受けたであろう給付額×(1-生活費控除割合)×寄与期間

によって算出します。

①寄与相続人が通常受けたであろう給付額の算出方法

家業と同じ種類,同じ規模の事業で働く同じ年齢層の者の年収額で,賃金センサス(毎年実施されている賃金構造基本統計調査の結果に基づいて,労働者の性別,年齢及び学歴等の別に,その平均収入をまとめたもの)などによって算出されます。

②生活費控除割合

被相続人から生活の援助(住居の提供,生活費の援助)を受けている場合にはその割合を控除します。寄与相続人は,被相続人の援助があったことで,生活費の支出を免れているからです。

家事従事型寄与分に関するQ&A

被相続人の経営する株式会社に無償で労務を提供していた場合,寄与分は認められますか?

あくまで会社に対する労務の提供で,被相続人に対して労務を提供したとは言えないため,寄与分は認められないのが原則です。ただし,会社とは名ばかりで,実際には被相続人の個人事業に近く,被相続人と経済的に極めて密着した関係にあり,会社への貢献と被相続人の資産の維持,増加との間に明確な関連性があるような場合には,寄与分が認められる可能性があります。

被相続人の事業がうまく行かず,収益性が低かったような場合,寄与分はどう算定されるのですか?

事業の収益性が著しく低い場合には,その従業員に対する報酬も低額になることから,賃金センサスで寄与分を算定すべきではないとされています。その場合,被相続人の確定申告書など,実際の経営状況,財務状況を踏まえ,寄与分を検討することになります。

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