不正競争防止法による規制
特許権、意匠権等が客体に権利を付与するという方法(権利創設)により知的財産権の保護を図るものであるのに対し、不正競争防止法は、「不正競争」に該当する行為を規制する方法(行為規制)により知的財産権の保護を図っています。
規制される行為の主なものとしては、以下のようなものがあります。
- 商品等混同惹起行為
- 著名表示冒用行為
- 商品形態模倣行為
- 営業秘密に関するもの
- 商品・役務内容等誤認惹起行為
- 信用毀損行為
商品等表示混同惹起行為
周知な他人の商品の表示、営業の表示との混同行為を禁止しています。
商品等表示
- 氏名
高知東急(たかち・のぼる)の旧芸名 - 商号
株式会社ミシュラン - 商標
商標登録出来なかった商標(長崎タンメン) - 商品の容器・包装
SEA BREEZEの容器 - その他の商品又は営業を表示するもの
ジーンズの後ろポケット部分のステッチ、ロゴマーク、学校の名称など
周知であること
当事者双方の地域で、広く認識されている必要があります。
「同一若しくは類似」
外観、称呼、観念に基づく印象等から全体的に類似しているかを判断します。
「混同を生じさせる」
周知な他人の商品(または営業)と誤解させるおそれがある場合です。
著名表示冒用行為
著名な表示にただ乗りすることや、ブランドイメージを損なうような行為を規制しています。
この規制は、類似関係にない商品・役務に対しても及びます。
なお、この規制による保護を受けるためには、商標登録されていることは必要ではありません。
著名な商品等表示
ルイヴィトン、シャネル、JAL、Budweiserなど
「混同を生じさせる」ことは要件ではありません
以下のような場合、混同を生じさせることはありませんが、ブランドイメージを損なう危険性が有りますので、規制の対象になります。
「シャネル」をポルノショップの名称として使用
「ディズニー」をパチンコ店に使用
商品形態模倣行為
形態のデッドコピー(実質的に同一)を禁止するものです。
この規制による保護を受けるためには、意匠法で要求される創作性も必要とされておりません。また、意匠登録されていることも必要ありません。
商品の形態
たまごっちの形など
模倣
他人の商品の形態を真似てこれと同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことです。たまたま同一になっても侵害とはいえません。
期間制限
日本国内において、原告商品が最初に販売された日から起算して3年を経過した商品については、適用されません。
営業秘密の不正取得・使用・開示
営業秘密とは
営業秘密とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものです。
例えば、男性用かつらの顧客名簿(定期的な手入れ、買換への需要があります)が、それに該当します。
営業秘密として保護されるための要件
- 秘密に管理されている
厳格に判断される傾向にあります。例えば、以下のような方法で管理されていることが必要です。
(例)「部外秘」との記載、従業員の誓約書の提出、アクセスを場所的・物理的に制限 - 有用である
有用な情報とは、事業活動に使用されていたり、利用されていたりすることで経費の節約、経営効率の改善等に客観的に役立つような情報です。 - 非公知である
非公知な情報とは、保有者以外からは、一般的に入手困難な情報です。
不正取得・使用・開示とは
- 不正取得
資料を無断コピーして持ち出すなど - 使用・開示
営業秘密を不正に取得した者が、自分でそれを使用したり、開示する行為のことで、男性用かつらの顧客名簿を不正取得し、これを使用して営業行為を行うことなどがこれに該当致します。
商品・役務内容等誤認惹起行為
商品や役務の原産地・品質等を偽ることにより、他の事業者より優位に立とうとする行為を規制しています。
原産地の誤認惹起行為
例えば、日本製のワインにフランスの風景写真やフランス語を付して、フランス製ワインであるかのような誤認を与える行為です。
なお、原産地誤認惹起行為は景品表示法やJAS法によっても規制されております。
品質等の誤認
- 商品に関する品質等誤認行為
例えば、発泡酒の瓶ラベルに、「ライナービヤー」と表示したり、駅から徒歩不可能な土地を駅から近いように表示する行為です。 - 役務に関する品質等誤認行為
例えば、エステティックサロンが「1ヶ月で×キロやせる」、「やせたら2度と太らない」と表示する行為です。
信用毀損行為
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知等する行為を規制しています。
商品・営業の誹謗
他店の商品を自社の店舗に陳列し、価格表に「故障多し」と表示する行為です。
会社の誹謗
競業会社の取引先にその会社が倒産の危機にあると告知する行為です。
知的財産権侵害の告知
商標権者であるカバンの製造・販売業者が、他社のカバンのマークが原告の商標と類似しているとして、他社商品を販売しているデパートに販売を停止するように通告したが、実際は類似の商標でなかった場合などは、信用毀損行為と判断されます。