
上司や同僚はモラハラの自覚なし?無自覚にモラハラしてしまう原因と対策を解説

モラハラをしている人は、自分がモラハラしていることに気づいていない、自覚していないことが殆どです。
その原因として、モラハラ加害者の生育環境や、社会に出てからのジェンダー(性的役割)の押し付けにより歪んだ固定観念を持ってしまうことや、その人の抱える障害が、自分がモラハラをしているという自覚を妨げていると考えられます。
このコラムでは、モラハラ上司や同僚がモラハラを自覚できない心理と、モラハラを自覚させる・気づかせる方法について解説します。
モラハラの定義と特徴

モラルハラスメントとは?
モラルハラスメント、通称モラハラとは、身体的暴力ではなく、言動や態度によって相手に精神的な苦痛を与える行為を指します。この暴力の特徴として、暴言や無視、虐待的な態度などが挙げられますが、外部には分かりにくく、加害者自身が自覚ないまま行っている場合が多いのです。
こうした心理的な操作が日常生活に深刻な影響を及ぼし、被害者が「どうしてこんなに苦しい」と感じても、それがモラハラであると気づくことは容易ではありません。この行為が家庭や職場という親密な空間で行われる場合、被害が見えにくく、ますます問題の認識が遅れる傾向にあります。
モラハラは夫婦や男女関係で発生するイメージがありますが,職場においても存在するハラスメントでパワハラの一種と考えてもよいでしょう。
職場でのモラハラの例
職場のモラハラは周囲が気づきにくく,モラハラ加害者本人に自覚がないことが特徴です。具体的には以下のような行為が該当します
- 精神的に圧力をかける
部下や同僚を侮辱する,遠回しに嫌みを言う。 - 無視,仲間はずれにする
業務上必要な連絡を意図的に行わない。部下が業務に関する話をしても無視をする。 - 部下への過剰な監視
仕事の進捗を必要以上にチェックしたり,トイレや休憩の時間も1分単位で監視する。 - 不当な評価をする
意図的にその者の評価を下げ,昇進の機会を奪う。
職場でもモラハラが発生する理由
モラハラが発生しやすい職場は,ハラスメントが常態化している可能性があります。
上下関係が厳しく,「部下は上司に従うことが当たり前」という風潮が当たり前になっていると非常に危険です。
また,昭和型の厳しく指導する文化が残っていると,上司は自分の言動がモラハラに該当すると思っていないため,無自覚にモラハラをしてしまうのです。
文化だけではなく,企業のハラスメント対策が不十分である場合,第三者へ相談できる環境が整っていない可能性もあります。
もし,自社のハラスメント対策が遅れていると感じた企業はすぐに対策を講じる必要があります。

上司がモラハラするのは職場文化のせい?

無自覚な加害者の特徴
モラハラ加害者はその言動が相手に精神的苦痛を与えているという自覚がないことが多いです。
なぜ自覚がないかというと、加害者自身が自分の行為を「正当」や「普通」と認識している場合が多いからです。例えば、家庭内で怒鳴ったり、無視したりする行動は、本人にとっては「正当なこと」「普通のこと」なので、人間関係を損なうモラルハラスメントに該当するということに気づくことができません。
また、被害者側が苦しみを表に出しにくいことも一因で、他人の痛みを理解する機会が少ないため、加害者は自分の行動の問題に気づくことなく生活することが多いのです。
無自覚な行動の背後にある心理
職場のモラハラがなぜ無自覚に行われるのか、その心理に目を向けると、過去の経験が影響していることが多いです。例えば、根性論や体育会系指導が当たり前の環境で育った人は、それが普通であると認識することがあります。
若いの頃は、そのような就労環境に耐え、苦しんだにも関わらず、年齢を重ねるにつれてになって部下に同じことをしてしまうことはよく見られます。
- 「俺たちの時代はもっと厳しかった,泣きごとを言うな!」と部下に怒鳴っていた
- 上下関係や男女差別が厳しい。
- 飲み会も仕事の一環として,強制的に参加させる。
このような就労環境で働いてきた人が、現代の働き方に見合った価値観を変えることができないままだと、部下に同じような価値観を振りかざすようになります。
モラハラ加害者は、実はとても自己肯定感が低く、「人より優位にたたないと自分は生きている価値がない」「自分に絶対に非があってはならない」という思いを抱えながら生きているため、部下のちょっとした言動に反応し、攻撃をします。
また、自己愛性パーソナリティ障害との関連性もあり、強い自己愛から来る「自分は悪くない」という信念が、モラハラをしているという気づきを妨げます。自分が与えている精神的苦痛に気づくことができないまま、加害者としての自覚がない状態が続いてしまうのです。
モラハラの自覚を促す具体的方法

「あなたのしていることはモラハラだ」と加害者より上の立場の人に伝えてもらう
モラハラを改善するには、まず自分の言動がモラハラだと自覚できるかどうかが大切です。しかし、モラハラ被害者から直接「それはモラハラだ」といっても、効果がない場合が殆どです。
モラハラ加害者は、モラハラ被害者を無意識的に下に見ているので、「モラハラ被害者のいうことは間違っていて、それを自分が正してあげている」とさえ思っています。
「モラハラだ」と指摘したところで、「気にしているのはお前だけだ」「被害者ぶって俺を悪者にしようとしている」と受け入れられないでしょう。
そこで、効果的なのは「モラハラ加害者が自分より上だと思っている人」にストレートに言ってもらうことです。加害者の信頼している尊敬している上司や人事担当、精神科医やカウンセラー等の専門家からの意見だと、素直に聞き入れる可能性があります。
しかし、自己愛が強すぎて、「自分以外は全員バカばっかり」「自分たちのこともよく知らないくせに口を出すな」と周囲の意見も聞き入れることができない人には、周囲の意見やカウンセリングは効果が少ないので注意です。
心の底から「変わらなきゃマズイ」と分からせる
モラハラをしている人は、被害者に対して「なんだかんだ言ってこいつは自分には逆らってこない」とたかをくくっています。一方、見捨てられることにとても恐怖を感じています。相手に依存しているのです。
きっぱりと「あなたの指導はパワハラである」と伝え、人事や労働組合へ告発することも選択肢の一つです。この選択は加害者・被害者どちらにもメリットがあります。加害者は、自分がやってきたことの何がいかなかったのかを考えるきっかけになります。モラハラ加害者は、自分を顧みるチャンスを与えられなかった人です。「自分が変わらなくてはならない」と本気で思うかもしれません。
被害者の方は、誰かに相談することでモラハラ加害者の洗脳から少し離れることができます。「自分はモラハラを受けていたんだ」と被害者であることを自覚し、相手の言動がおかしかったことに気づくことができます。
モラハラを改善できるかの見極めのポイント

基本的にモラハラは治すのが難しい
上記の行動で、モラハラ加害者が「自分はもしかしてモラハラをしているのかも・・・?」と気づかせることができたなら、大きな一歩です。しかし、モラハラ加害者の価値観は、生まれてから人生をかけて築かれてきたものですので、自分を変えることは決して容易ではありません。
一時的に優しくなったり、改心した素振りを見せていても、また加害者にとってつらいことがあれば、モラハラというストレス解消法に戻ってしまいます。アルコールや薬物が意志の力だけではやめることができないように、モラハラも自分の意思の力だけではやめることができません。

相手がモラハラを改善できるかどうかの見極め方
上記の通り、モラハラを治すことは基本的には非常に難しいですが、モラハラを改善することができる人はまれにいます。相手がモラハラを改善することができるのか、見極めるポイントとして、下記を参考にしてください。
- モラハラ被害者以外の第三者に、「自分のモラハラを治したい」と正直に相談できている。
- 「自分のモラハラは自分ひとりの力では治せない」と、自分の無力さを認めている(支配欲を手放す)。
- モラハラを改善するために、カウンセリングや、加害者プログラム等の外部の機関に足を運ぶなど、実際に行動ができている。
- 「自分の価値観は間違っていた」と素直に認めることができている。
被害者側のポイントとしては、相手の「もう二度としない、心を入れ替える」と言った言葉や「自分に向ける一時的な優しさ」に惑わされないことです。
周囲のサポートを利用し「相談する」「周囲との繋がりを持つ」ことがとても重要なポイントになってきます。
上司のモラハラを改善する方法は?

指導とモラハラの違いを理解する
モラハラ上司が改心するためには「厳しい指導」と「モラハラ」の違いを理解する必要があります。
指導とは,部下を成長させるためのものです。
ですので感情的にではなく冷静かつ論理的に部下に伝えることや,怒鳴らずに「ここを改善すればもっとよくなる!」などポジティブな声かけを意識すると良いでしょう。
職場全体で意識を変える
モラハラ上司の態度が改善されたとしてもそれは一時的なものであり,時間が経つとまたモラハラが始まると言ったケースもあります。
改心した上司の態度を継続させるためには職場全体でモラハラを防ぐ環境整備が大切です。
モラハラをはじめとするハラスメント研修も有効ですし,部下からの匿名で定期的なフィードバックを取り入れ人事部から上司に改善点を伝えていくこともよいでしょう。
また,企業の仕組みとして「社内相談窓口」の設置・運用を行っていきましょう。
まとめ

モラハラをする上司は、モラハラの自覚がない場合が殆どであり、その原因は過去の労働環境や、自己愛性パーソナリティ障害等のパーソナリティの問題が関係しています。
また、モラハラを自覚させることは容易ではありませんが、第三者を介入させることで、モラハラ上司にモラハラを自覚させるきっかけを与えることができる可能性があります。
モラハラ加害者がモラハラを自覚し、周囲のサポートを得ようと思ったときは、モラハラを改善させる大きな一歩です。
加害者本人だけでなく職場全体で改善の仕組みを作り,持続的変化を促すことが効果的です。
一方、モラハラをいつまでも自覚することができない、自覚しても「相手が悪いから仕方ない」「自分は変わらない」と自分を変える気がない場合は、モラハラが改善されることはないでしょう。